薬味としておなじみの「しそ」。特に葉の部分は、「大葉」として刺身の“つま”や天ぷらに添えるためだけでなく、肉などに巻いたり(その後焼いたり揚げたり)しますね。実は芽や花、実まで薬味などに使える、奥深い食材でもあります。
スーパーなどで季節を問わず購入できますが、しそには本来は明確な「旬」があり、赤しそと青しそでは香りが最も高まる時期も異なります。
本記事では、しその旬の時期や種類の違い、主な産地、栄養価、長持ちさせる保存方法、さらに全国の郷土料理までを整理して解説します。
目次
しその本来の旬と種類の違い
まず押さえておきたいのが、赤しそと青しそでは役割や旬が異なるという点です。現在は青しそが一般的ですが、もともと「紫蘇」という言葉は赤しそを指していました。ここでは、それぞれの旬や特徴を整理します。
赤しその旬は「6月〜7月」

赤しその旬は、初夏の6月から7月にかけてのわずか1カ月とかなり短いです。
もともと赤しそは、日本において古くから梅干しや紅しょうが、きゅうりの漬物などの色付けに欠かせない食材として重宝され、日本人の伝統的な食文化を支えてきた歴史があります。梅の実が熟し、収穫されるタイミングと赤しその最盛期が重なるこの時期は、保存食作り、いわゆる「梅仕事」の季節でもあります。
青しその旬は「7月〜10月」

青しその旬は、7月から10月ごろです。本来「紫蘇」とは赤しそのことを指し、青しそはその変種にあたりますが、現代の日本の食卓においては、刺身のつまや料理の彩り、香味野菜として使われやすい青しそのほうがなじみ深い存在となっています。
旬が夏であるにもかかわらず、私たちが一年中新鮮な青しそを購入できる理由は「ハウス栽培」にあります。しそは温度や日照時間の管理に敏感な植物ですが、栽培技術向上により、季節を問わず安定した品質での出荷が可能となりました。
ハウス栽培のものは葉が柔らかく、大きさも揃っているのが特徴です。光を当てすぎると葉が固くなってしまうため、細かいコントロールがきくハウス栽培だからこそ生み出せる品質といえます。
刺身の彩り「花穂じそ」や「芽じそ」の時期

しそは葉だけでなく、成長段階によってさまざまな部位が料理に使用できます。
まずは、発芽して間もない双葉の状態である「芽じそ」です。青しその芽を「青芽(あおめ)」、赤しその芽を「紫芽(むらめ)」と言います。これらは、刺身のつまや吸い物の浮き身などに重宝されます。
しそが成長して花を咲かせる時期、9月から10月にかけて旬を迎えるのが「花穂じそ」です。これは花のつぼみがついた状態の穂で、刺身に添えられた穂を箸でしごいて醤油に散らすことで、さわやかな香りが広がり、魚の臭みを消す役割を果たします。
さらに花が終わり、実を結んだものは「しその実」と呼ばれ、佃煮などに利用されます 。
しその産地は特定の県に偏っている

しそ(大葉)は特定地域に生産が集中しています。ここでは主な産地を統計から確認します。
主要産地
しその安定供給を支えているのは、西日本の温暖な地域に位置する主要産地です。令和4年産の地域特産野菜生産状況調査(確報)によれば、愛知県の出荷量は3,990tで、全国シェアは圧倒的な1位を誇っています。これに2位の宮崎県(874t)、そして静岡県(537t)、大分県(534t)が続きます。
愛知県では大葉(青しそ)はすべてハウス栽培(出典:JAあいち経済連)で、一年を通じて安定した品質のしそを出荷できる体制を整えています。
赤しそは愛知の碧南市のほか群馬県前橋市が有名な産地で、露地栽培が多いです。
野菜類トップクラス! しその栄養価と期待される効能
しそは、少量でも栄養密度が高い野菜です。特にβ-カロテンが11,000μg、ビタミンB2が0.34mg、カルシウムが230mgとかなり豊富です(数値は生葉100gあたりの数値。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)。さらにポリフェノールや香り成分にも特徴があります。
シソ科に多く含まれる成分「ロスマリン酸」とは
赤しそに豊富に含まれる「ロスマリン酸」は、水溶性ポリフェノールの一種であり、シソ科の植物に多く見られる特徴的な成分です。特に赤しそにおいてその存在が際立っており、抗酸化作用が強いことから大きな注目を集めています。
香り成分「ペリルアルデヒド」の防腐・殺菌作用
しその爽やかな香りの主成分である「ペリルアルデヒド」には、強力な防腐・殺菌作用があります。
生魚にしそを添える文化は、その香りが持つ腐敗防止作用を活かして食中毒を防ごうとした、先人たちの知恵の結晶といえます。
この成分は揮発性が高いため、食べる直前に刻んだり、手で軽く叩いたりすることで香りが立ち、その効果をより引き出すことができます。また、梅干しと一緒に漬け込まれる赤しそにも同様の効果があり、保存性を高める助けとなっています。
しその選び方と鮮度を保つ保存テクニック

しそは非常にデリケートで乾燥しやすく、油断するとすぐに萎びてしまいます。ここでは、みずみずしさを1週間キープする冷蔵のコツから、大量消費に便利な冷凍・塩漬け術まで、実用的なテクニックを詳しく紹介します。
1週間長持ちさせるキッチンペーパー保存法
しそを1週間ほど保存するためには、適切な水分管理が必要です。
具体的な手順としては、まず軽く湿らせたキッチンペーパーを用意し、しそを優しく包みます。それをビニール袋に入れ、乾燥を防ぐために密閉した状態で冷蔵庫の野菜室に保存します。この際、一度にまとめて包むのではなく、数枚ずつ小分けにすることで、より水分を保ちやすくなり、使う際も必要な分だけを取り出せるため、全体のみずみずしさをキープできます。
この方法であれば新鮮なしそを、家庭でも最後の一枚まで無駄なく、旬の香りと共に楽しむことができるでしょう。
大量消費に最適!冷凍保存と塩漬けのコツ
冷蔵保存では1週間程度が限界ですが、「冷凍保存」を活用すれば、1カ月程度保存できます。
冷凍保存の手順は、まず葉をきれいに洗って水気をしっかりと拭き取り、数枚ずつラップに包むか、使いやすいように千切りにしてから密閉袋に入れるのがコツです。凍ったまま手で揉めば簡単に砕けるため、使いたい時にすぐに薬味や料理のトッピングとして活用できるメリットもあります。
旬を味わい尽くす!地域に伝わるしそを使った郷土料理
ここでは、しその旬を最大限に活かした全国各地の代表的な味をご紹介します。先人の知恵が詰まった、奥深い活用の歴史を覗いてみましょう。
【宮城県】仙台味噌を巻いて揚げる「しそ巻き」

「しそ巻き」は、「仙台味噌」を活用した、宮崎県の伝統の味です。この料理は、くるみやごま、砂糖、唐辛子などを混ぜ合わせた味噌を、しそでくるくると巻いて楊枝に刺し、油で揚げて作られます。
もともとは「おかず」として食されていましたが、砂糖を加えたことで甘辛い味わいになり、現在では「お茶うけ」や「子供のおやつ」、さらには日本酒のアテとしても広く親しまれています。
【青森県】食欲をそそる夏の定番「なすの赤しそ巻き」
青森県津軽地方の夏に欠かせない「なすの赤しそ巻き」は、旬の時期に大量に採れるなすとしその葉を組み合わせた伝統的な夏の日常食です。
作り方は非常にシンプルで、棒状に切ったなすに味噌を付け、しその葉で巻いてフライパンで焼くだけの家庭的な一品です。
出来立ての香ばしさはもちろん、冷蔵庫で一晩保存して味がなじんだ冷たい状態でも美味しくいただけます。
【岡山県】プチプチ食感が楽しい「しその実の佃煮」

岡山県美作(みまさか)地域に伝わる「しその実の佃煮」は、実特有のプチプチとした食感と爽やかな香りが楽しめる、夏ならではの郷土料理です。しそは前述の通り葉だけでなく、芽や花、そして実まで無駄なく味わい尽くせる食材であり、この佃煮は季節限定の贅沢な楽しみとなっています。
美作市周辺では、しその実が収穫される夏の時期に、ご飯のお供として親しまれています。
作り方は、しその実を茎から手で丁寧にしごき取るところから始まります。さっと茹でてアクを抜いた後、醤油、酒、しらす干しとともに鍋に入れ、汁気がなくなるまでじっくり煮詰め、仕上げにみりんで照りを加えます。


