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「鶏肉のカシューナッツ炒め」は伝統中華だと思ってたけど…
たいていの中華料理屋さんにはある人気定番メニューの一つ「鶏肉のカシューナッツ炒め(腰果鶏丁)」。でもそれは純粋に中国で生まれたレシピではなく、アメリカに移民した中国人が生み出した「born in America」な一品のようです。

そう言われれば、カシューナッツってそもそも中南米原産、つまり熱帯や亜熱帯に分布している植物ですよね。
中国には「宮保鶏丁(鶏肉のピーナッツ辛子炒め)」と言う鶏肉のカシューナッツ炒めの原型?となった料理があります。アメリカに渡り、比較的入手しやすくなったカシューナッツをピーナッツの代わりにして作ってみた人がいた、ということでしょうか…
日本だけでなく、生誕の地アメリカはもちろん、全世界的に人気メニューになっている「鶏肉のカシューナッツ炒め」。
中国から日本に渡りアレンジされた現在の「ラーメン」や「担々麺」、「麻婆豆腐」などが人気メニューであるように、そして日本のすしが世界的人気になり、それぞれの国で原型をとどめないほどに独自の進化を続けているように、料理の世界でも、言語学で言うピジン言語(2カ国語が混じり合ってできた通用語)やクレオール化(ピジン語が母国語化すること)が進むことが、全世界規模のレシピに成長する必須条件なのかもしれません。
ブラピも食べた?鶏肉のカシューナッツ炒め

そんな歴史のせいか鶏肉のカシューナッツ炒めはバリエーションが豊富です。アメリカ ミズーリ州スプリングフィールドでは、鶏肉を揚げたスプリングフィールドスタイルの鶏肉のカシューナッツ炒めが、ある種の名物料理になっています。

ちなみに、あのブラッド・ピットはオクラホマ州生まれのミズーリ州スプリングフィールド育ち。もしかしてブラピも子どもの頃、スプリングフィールドスタイルの鶏肉のカシューナッツ炒めを食べていたかもしれません。

そもそも原型となった「宮保鶏丁」も、四川省では花椒を加えて麻辣味にするなど、四川・山東・貴州・北京と、すでに中国国内にあって、それぞれの地域で独自のスタイルに発展しています。
何かこの料理には、人に新しいものをアレンジさせたくなる魔力みたいなものが潜んでいるんですかね?

そう言えば、日本でもお店によってけっこう味付けが違うものにお目にかかることが多い気がします。材料もフクロタケが入っていたり、長ねぎが入っていたりいなかったり…
Reproスタイルの鶏肉のカシューナッツ炒め
そういう料理なら自由に「Reproスタイルの鶏肉のカシューナッツ炒め」を作ることができます!
と言ってはみたものの、もとよりそんな独創性を持ち合わせているはずもなく…
単に自分好みの味付けを試してみましょう。今回のレシピのポイントは、
(1)カシューナッツは表面が薄くきつね色になるぐらい揚げ炒めをした方が美味しい。
(2)甘みは砂糖を使わず控えめに。代わりに紹興酒でほのかな甘みと大人の風味を。
この2点です。では早速作っていきましょう!
材料・分量(2人前)
- 鶏もも肉(小口切り) 200〜250g
- カシューナッツ 60g
- 玉ねぎ 1/4個(50g)
- ピーマン 2個(40g)
- しょうが(すりおろし) 1片(10g)
- 赤唐辛子(小口切り) 1/2〜1/3本
- サラダ油 大さじ2(30ml)
【下味用】
- 片栗粉 大さじ1(9g)
- 酒 大さじ1/2(7.5g)
- 塩 少々(1g)
【合わせ調味料】
- オイスターソース 大さじ1(18g)
- 鶏ガラスープの素 小さじ1/3(1g)
- 水 大さじ2(30g)
- 濃い口しょうゆ 小さじ1/2(3g)
- 紹興酒 小さじ2(10g)
【スパイス】
- こしょう 適量
下ごしらえ
まずは下ごしらえから。中華料理って炒め始めると、何があっても待ってもらう時間はないので、先に下準備できることはすべて準備しておくのが成功の秘訣。炒めながら調味料や材料を合わせられるのはプロの方たちだけですから…

ボウルに入れた鶏もも肉(小口切り)に塩を揉み込み、さらに酒を加えて揉み込みます。塩も酒も肉を柔らかくする効果があるので、揉み込んだらちょっと時間をおきます。

さらに片栗粉を加えて混ぜ合わせます。

玉ねぎとピーマンは1cm角ぐらいにカットしておきます。

しょうがもすりおろしておきましょう。

合わせ調味料の材料も混ぜておきます。これで下準備は整いました。炒める作業に入ります。
カシューナッツを揚げ炒めする

フライパンの表面温度を180℃に加熱し、ちょっと多めの油で、まずはカシューナッツだけを揚げ炒めします。180℃というと、ガス火で調理する場合は「中強火」ぐらいでしょうか。材料に「サラダ油」と書きましたが、高温での油の劣化を考えると、本当は太白ごま油がおすすめかもしれません。

カシューナッツの表面が薄くキツネ色になるまで炒めます。焦がし過ぎには注意しましょう。カシューナッツの香りが少し移った油は使いまわしたいので、ちょっと面倒なのですがカシューナッツだけをトングやカス取りなどで引き上げて皿などに退避させておきます。
弱火でしょうがと赤唐辛子を炒める

Reproレシピでは、カシューナッツを炒めたら180℃→140℃にフライパンの表面温度を下げています。ガス火で言うと「弱火」ということになるのでしょうか。
中華料理というと終始一貫して「強火」な印象ですが、Reproを使っていると、中華だからと言って必ずしも強火である必要はないなあ、と感じてしまいます。もちろんチャーハンのように強火の方が仕上がりがよいものもあるのでしょうが、お店で一貫して強火で調理している理由の大半は「調理時間を短縮する」という意味合いなのか、と。
何しろこのレシピでは、ここで弱火にしてフライパンの温度を下げつつ、すりおろしたしょうがと赤唐辛子を炒めます。
具材を弱火で炒める

しょうがと赤唐辛子の香りが立ってきたら、鶏もも肉を投入して炒めます。少なくともこの料理に関しては、弱火で炒めたから「べしゃっとする」みたいな心配は不要です。逆に弱火だと油ハネが少なくて助かります。

鶏もも肉に軽く火が通ったら、玉ねぎとピーマンも炒めます。この時にフライパンのふたをして2分間ぐらい蒸し焼きにすると、火の通りが早くなります。これも水分が飛ばなくてべしゃっとするんじゃないか?という心配は要りません。鶏肉に火が入りすぎるよりマシですし、結局、最後には合わせ調味料を入れて、とろみを付けてしまうんですから。
カシューナッツを戻し、合わせ調味料を加える

玉ねぎとピーマンにも火が通ったら、取り置いてあったカシューナッツをフライパンに戻し、温め直します。

カシューナッツが温まったら、事前に混ぜておいた合わせ調味料をかけ回します。
良く混ぜてとろみを付ける

合わせ調味料はすぐに再沸騰するので、耐熱性のシリコンへらなどでダマにならないように良くかき混ぜてください。この時にこしょうも適量を投入します。「四川風」がお好みの方は、こしょうではなく「花椒」に替えてください。
全体にとろみが付き、煮汁の水分がおおよそ飛んだら完成です。お好みですが、このタイミングでごま油を適量混ぜて風味付けをすると言うのもアリです。
鶏肉のカシューナッツ炒め完成

Reproスタイル鶏肉のカシューナッツ炒め の完成です。
甘さ控えめですが、普通に美味しいです。
作ってから思ったのですが、香草(シャンツァイ)をトッピングしても美味しかったかなあ〜
ちょっとエスニックなスパイスを入れて東南アジア感を出すのもアリかも…
甘さもその日の気分で(例えばお子さんがいらっしゃるとか)砂糖を加えても良いですし、逆に辛いのがお好みの方はこしょうを花椒(ホワジャオ)に替えて四川風にしたり…
ひと手間かけて良いのであれば、鶏肉を揚げてから炒めてスプリングフィールドスタイルにするのも気分次第。近くのスーパーにカシューナッツが見つからなかった時には、先祖返りして「鶏肉のピーナッツ辛子炒め」に変更するのも大いにアリです。
鶏肉のカシューナッツ炒めは懐が深い料理
このレシピを作って分かったことは、この料理は、作る人の考え方次第で町中華風にもエスニック風にも四川風にも、さらには北米スタイルにも容易に変えることができるし、アレンジのアイディアが自然とインスパイアされてくる「懐の深さがある」ということ。この自由自在さが、さすが「クレオール料理?」です。
世界の人々も日本のおすしを食べて、同じように「これって、こんな風にしたらもっと美味しくなるんじゃない?」と感じ、日本人が見るとちょっとギョッとするような食べ方をしているんでしょうね。(グローバルに見たら、おすしの共通項なんて「酢飯の上に何かを載せる料理。日本では生魚を載せるらしいけど…」ぐらいのことでしょうし)
ということで、「鶏肉のカシューナッツ炒め」のReproレシピを公開しておきます。Reproユーザーの方は公式アプリで検索して使ってみてください。ただし味付け・材料は、その日の気分次第で…