このレシピをお手本に本格的なリゾットを作ってみる
リゾットって簡単そうで、作ってみると「おじや」みたいなモッタリ感が出たり、意外に難しかったりします。そこで今回はこのレシピを参考にしてみようと。
この伊勢丹新宿店の柬理美宏シェフのレシピって以前から素敵だなあと思っていたんですよね。
リゾットをアルデンテに仕上げる3つのコツ

柬理シェフによればアルデンテな本格的レシピに仕上げるコツは、
- 米を洗わずに炒め、オイルコーティングする
- 熱々のブイヨンを少量ずつ加えて炊き上げる
- 炊いている最中は木べらで混ぜ過ぎない
ということだそうです。なるほど、なるほど…
まずはこのレシピどおりに一番基本の「チーズリゾット」をReproで作ってみたいと思います。
チーズリゾットの材料(2人分)
- 米⋯1合(150g)
- オリーブオイル⋯大さじ2(30ml)
- ブイヨン⋯3カップ分(600ml)
- ローリエ(あれば)⋯2枚
- 白ワイン⋯大さじ1(15ml)
- バター⋯20g
- パルミジャーノ・レッジャーノチーズ⋯大さじ2(12g)
- 塩⋯少々
- 粗挽き黒こしょう⋯少々
チーズリゾットの作り方
(1)洗っていない生米をオリーブオイルを入れて中火にかけ、木べらでやさしく混ぜながら5分ほど炒め、同時にローリエと白ワインを入れたブイヨンを温める。
(2)お玉2杯分のブイヨンを入れて、米を炊き始める。
※この時に、ブイヨンの温度が低いと米のでんぷん質が変質して粘り気のあるリゾットになるので要注意だとのこと。
(3)米がブイヨンを吸って、表面にカニ穴のような穴が開いてきたら、その都度、お玉半量の熱々のブイヨンを足しながら、弱火で20分炊く。
※この時の注意点は、「木べらでかき混ぜ過ぎると粘りが出てしまいます。鍋底がこげないように、時折、木べらで軽く鍋底をこそぎ、鍋をふってください」だそうです。
(4)米がふくらみ、粒が立って、艶々してきたら、味見をする
※この時のポイントは「20分炊いたら、一度、味見をしてみてください。本場のリゾットは米に微かに芯が残る程度がベストな炊き上がりとされています」だそうです。
(5)火を止め、バターとパルミジャーノ・レッジャーノチーズを加えて余熱で溶かし、塩で味を調えてこしょうをふる
※この時のポイントは「米をアルデンテに仕上げたら、その後は余分な熱を与えたくないのですぐに火を止めて。」だそうです。つまりバターとチーズは余熱で溶かしながら塩で味を調整する
ここまでが柬理シェフの「元レシピ」による分量と作り方です。
Reproレシピとして推理・再構成する

ここからは、この元レシピをもとにReproレシピに作り直してみたいと思います。
リゾット調理法の注目点
改めてこの元レシピを見ると、興味深いポイントが多いですね。
(1)は中華粥でもお馴染みの米を油でコーティングするという工程です。中華粥は米を割って逆にとろみを出す(=でんぷん質を流出しやすくする)のですが、リゾットの場合はコーティングだけする(=出来る限りとろみを出さない)というのを目指しているんでしょう。
(2)はとても勉強になるポイントです。以前にNHKの番組で京都の名料亭「瓢亭」の高橋義弘シェフが、瓢亭の名物「朝粥」の作り方を披露していましたが、この時も沸騰したお湯に米を入れていました。
その番組では普通のおかゆの作り方(=常温から米を入れ炊く)のと、髙橋シェフの作り方を比較して検証しており、熱いお湯から炊く方がでんぷんの流出量が少なく、さらっとした仕上がりになることを立証していました。
リゾットの本質
そして最も重要なことは、リゾットにおける「炊飯調理の本質」です。
【普通の炊飯の場合】
(1)7〜10分かけて沸騰させる→(2)強火で少し沸騰させる→(3)火を弱めふたをして水分を蒸発させる=カニ穴が開く→(4)蒸らしをする
という工程になりますが、この工程の(2)と(3)を20分間繰り返すというのが「リゾットの本質」なのですね。
以前のコラム「鍋で失敗なくごはんを炊く科学的なコツ」で触れた教科書的な炊飯の基本条件
「98℃以上の温度に20分間置く」
はクリアしたいので、20分未満で終了してしまうのは避けたいところです。(ブイヨンが足りなくなるという最悪の場合は「お湯を足す」という緊急対応で凌げるのかもしれませんが…)
ブイヨンの1回に使う分量を推測する
さて元レシピでは、オリーブオイルで炒めた米に最初は「おたま2杯分のブイヨン」を入れています。その後はカニ穴ができるたびにおたま半量のブイヨンを足して、同じ工程を20分間繰り返しています。
元レシピの写真から横口レードルの正確な容量は推測できませんが、業務用の横口レードルの最大容量は180mlです。もし柬理シェフが一番大きいレードルを使っているとすれば、すり切り一杯(満水量)入れる人はあまりいないでしょうから仮に8分目として1杯で150ml。
業務用おたまだと最初に600mlのブイヨンの半量=300mlを入れることになります。逆に「おたま半量」は満水量から逆算する方が自然でしょうから90mlとして、最大サイズのおたま(横口レードル)なら、3回注ぎ足しをして、最後のカニ穴が開いた時にちょうど20分経過していれば良いと言うことになります。
Reproレシピでは2/3量で
適正な表面温度を探るために何回か実験を繰り返さなければいけないでしょうから元レシピの1合はちょっと分量的にしんどいです。
ということで、2/3合=100gの米で炊いてみたいと思います。
(そもそもこのぐらいの量が2人分にちょうど良い気もします。いや、おしゃれなレストランだったら半合=75gぐらいかな…)
2/3合で割り戻した分量は以下のとおり。
Reproレシピの材料と分量

- 米⋯2/3合(100g)
- オリーブオイル⋯30ml
- ブイヨン⋯400ml(丸どりだしDX250g+水150g)
- ローリエ⋯1枚
- 白ワイン⋯10ml
- 無塩バター⋯15g
- パルミジャーノ・レッジャーノチーズ⋯大さじ2(12g)
- 塩⋯1g
- 粗挽き黒こしょう⋯少々
パルミジャーノと塩の分量以外は、単純に2/3に割戻した数値です。パルミジャーノはちょっと味にパンチを加えるために最後にトッピングもしたいと考えて、総分量は元レシピのままにしました。
塩の分量は最初から適当な塩分濃度を想定するなら、水分があるうちに加えた方が均等に溶けやすい気がします。
それに仕上がりに塩を振ってかき混ぜてしまうと、せっかくパラッと仕上がっても、それで粘りが出てしまいそうですから。
【塩分濃度の想定】
米100gは普通の炊飯後には220gぐらいに膨れます。
この220gに対して「重量比0.7%の塩分濃度」を考えてみると、必要な食塩量は1.54g。
これに対してパルミジャーノの食塩相当量=約0.48g/12g(想定)とすると、
加える食塩量=約1gと言うことになります。
まあこのぐらいの塩味なら健康への悪影響もさほどないでしょう。
そしてブイヨンですが、元レシピでは顆粒だしを使っていましたが、実験では日本スープさんの「丸どりだしDX 250g」+水150gを使ってみることにしました。
使用する調理器具

- リゾットを炊くステンレス多層鍋14cm(CRISTEL L 14cm)
- ブイヨンを保温するステンレス多層鍋12cm(Vita Craft ディア片手鍋12cm)
- 小さめのシリコンへら
- 容量の分かっている小さいレードル(もしくは計量カップ)
Reproでの調理手順
- ブイヨンは白ワインとローリエを加え、別のReproで95℃に保温
- 米とオリーブオイルを混ぜ合わせながら表面温度=150℃に加熱し、4分間炒める
- 米を炒めたら表面温度=105℃に下げつつ1回目のブイヨン(約200ml)を投入
- 以降はそのまま20分間ブイヨン注ぎ足しを繰り返す
鍋の表面温度を沸点よりわずかに高い105℃に設定すれば、カニ穴はそこそこ開くけれど、それほど激しくグツグツしない沸騰具合が得られる気が。
温度ドロップするのもいやですが、20分経過しないでブイヨン切れ、というのもいただけないので、ここはバランスを考慮しました。さあ、それでは実験です!

(1)パルミジャーノ・レッジャーノをすりおろしておく

まずパルミジャーノ・レッジャーノ12gをすりおろしておきます。8gは最後に混ぜるために、4gはお皿に盛り付けたあとにトッピングするために取り分けておくと便利です。
それから無塩バター15gも切り分けておきましょう。
(2)オリーブオイルと米をよく混ぜておく

元レシピにはこんな工程はありませんでしたが、オイルコーティングすると言うのであれば、加熱する前にオリーブオイルと米をよく混ぜておいたほうが良いのでは?と思いやってみました。
(3)表面温度=150℃で5分間炒める

オリーブオイルと米をよく混ぜたら鍋をReproに置き加熱開始です。設定温度は150℃。米が焦げないように、シリコンへらなどで混ぜながら5分間炒めると、次第に米の表面が白くなってきます。
(4)1回目のブイヨン投入

Reproの場合5分経過し、アラーム音が鳴ったら1回目のブイヨン投入です。ここで95℃に保温したブイヨン200mlを投入します。元レシピに「注いだ途端にブイヨンが沸き上がり、湯気が立ち上がります。」と書かれているような状態になります。
そのまま大部分の水分が蒸発し、カニ穴が開くまで何もせずに。鍋の材質にもよるでしょうが、水分を蒸発させ過ぎなければ、底が焦げ付くことはまずありません。
(5)2回目〜4回目のブイヨン投入

1回目のブイヨン投入でカニ穴が開いたら2回目のブイヨン約60mlを投入します。

この時、焦げ付き防止のために、小さめのシリコンへらなどで軽く鍋底をこするようにして、鍋を軽く揺すってあげます。

以降はカニ穴が開くたびにこの作業を繰り返します。元レシピでは火を止めてから塩をしていますが、最後の4回目のブイヨン投入の時に塩も一緒に入れてしまいましょう。この方が塩がまんべんなく溶けやすいかと。
きちんと塩分濃度を事前に考慮しておけば「塩味がつき過ぎ」という事態も避けられるはずです。
(6)20分経過したら味見

20分経過したら軽くシリコンへらで混ぜて味見をしてみます。この時に塩味が足りなかったら、塩を加えて調整してください。元レシピにもあるとおり、水分がほどよく蒸発して、わずかにアルデンテに仕上がっていればOKです。

火を止めて、素早くパルミジャーノ・レッジャーノとバターを混ぜます。きれいに混ざり合うようにするのは大切ですが、あまりこね過ぎると、せっかくパラッと粒立ちの良い仕上がりにできても粘り気が出てきてしまうのでご注意を。
(7)黒こしょうとパルミジャーノをトッピング

お皿に盛り付けたら、最後に残しておいたパルミジャーノと粗挽きの黒こしょうをトッピングして完成です。ローリエがほんのり香りますが、さらにバジルの葉をトッピングしてあげるのもアリですね。
温度ドロップの検証結果
さてこの作り方をした場合、元レシピで避けなければいけないポイントとして強調していた鍋の温度ドロップはどうなっていたのでしょうか?
下のグラフはReproの実験ログから、Reproが検知していた毎秒の測温値の推移を抽出したものです。

Reproのログで見ると、鍋底の表面温度は150℃(炒めタイム)→105℃(煮込みタイム)に推移すると同時に200mlの95℃のブイヨンを投入しても103℃までしかドロップしていません。
その後も60mlのブイヨンを注ぎ足しするたびに103〜104℃に下がって105℃に戻るという、わずか2℃差の温度ドロップに留まっています。
見た目にはブイヨンを入れた一瞬グツグツが収まるものの次の瞬間にはまたグツグツし始める、という感じです。
これは温度ドロップを検知すると出力を瞬間的に上げるというReproの自動制御機能のおかげもありますが、そういう機能がないガス火や通常のIHコンロでも、ある一定以上の火力を維持していれば、この分量で、かつ95℃ぐらいに保温されているブイヨンを投入する限り、そこまで気になる温度ドロップはないのだろうと推測されます。
ということで、今回はこれでReproレシピとして公開することに。
リゾットは無限のバリエーションが

Reproユーザーの方は、このレシピを参考に「失敗のないアルデンテなリゾット」を試してみてください。
今回は、極めてシンプルなリゾットを作ってみましたが、これを機会に、例えば粗みじん切りの玉ねぎとベーコンを炒めたものを加えてみたり、さらにトリュフオイルを落として風味付けしたり、元レシピで紹介している「ベーコンときのこのトマトリゾット」にしたり、瓶詰めのホワイトアスパラを最後に加えたり、…
元がベーシックな料理ですからバリエーションの幅は無限大。ぜひ「自分好みの一品」を創作してお楽しみください。





