お取り寄せ餃子は取説を信じない勇気

1年前のコラム記事をnoteに移植したら

 約1年前に「餃子の焼き方について考える(1)亀戸ぎょうざ編」というコラムを公式サイトに書いたのですが、それを今頃になって「note」にも移植しました。


この中には以下の一文も。

「餃子を焼く最適温度は180℃
時を同じくして、noteに公開されている、焼き餃子協会 代表理事の小野寺 力さんのこの記事を読んだのも、餃子の焼き方について考えさせられた一因でした。」

ちなみにここで引用した小野寺さんのnote記事はこちら。

救世主登場!

 このコラムをnoteに移植した瞬間、なんと小野寺さんから、

「興味深い実験、とても参考になります!もしよければ実際現場で焼かせていただきたいです。 180度は餃子の皮に接する部分の温度ですので、冷凍餃子を置いた時とかお湯を入れた時とかの油の温度変化、あとは餃子が接しているか接していない面かで温度が違うと思いまして、どこの180度であるかという点は重要になるかと思ってます!」

とのご連絡が…
元の「亀戸ぎょうざ」のコラムを読んでいただくと、取説を片手に、その焼き方をどうやって再現するか?「水蒸気爆発的状態」まで体験しながら、悪戦苦闘した当時の様子をご理解いただけるかと。それでも完全に自分が納得できる焼き具合ではありませんでした。

「餃子を焼くのは自信があるので、一度見ていただきたい。」

なんと巨匠みずからご足労いただいて「模範演技」をしていただけると。願ったりかなったりです。noteの影響力すごいな…

マエストロが家にやってきた!

焼き餃子協会 小野寺 力 代表理事

 一足早いクリスマスのサンタさんのようにマエストロが家にやってきた!
焼き餃子協会 代表理事の小野寺 力さん。焼き餃子協会のオフィシャルポロシャツ?を着用しての登場です。
サンタさんよろしく冷凍亀戸ぎょうざ(16個入り)x 2パックと米油というプレゼントを携えて…
小野寺さんによると、餃子を焼くときには米油かラードがお勧めだそうですが、ラードは精製度合いが高い高品質のものなら風味があって良いのですが、精製度合いが低いと餃子が焦げやすくなるそうで、万能選手は米油とのこと。
のっけから勉強になります。

マエストロが焼く冷凍亀戸ぎょうざ

 まず何はともあれ、マエストロが亀戸ぎょうざを焼く動画をごらんいただきたいのですが、その前に調理道具と食材の説明を。

まずフライパンは前回の実験の時と同じSCANPAN CTX 20cmです。

SCANPAN CTX 20cmとSCANPANクラシックふた20cm

もちろん焼くのは「冷凍亀戸ぎょうざ 16個入」。1回で8個を焼きます。

冷凍亀戸ぎょうざ(16個入り)

Reproの設定はまず至ってシンプルなものにしてみました。

  • まずフライパンの表面温度=120℃に加熱
  • 次に表面温度=180℃に加熱

以上です。
それではマエストロが焼く冷凍亀戸ぎょうざの動画をごらんください。

マエストロは取説完全無視です

 衝撃的です。いつも普通に餃子を焼いている方からすれば「どこが衝撃的なの?」ですが、前回のコラム記事をごらんいただくとお分かりのとおり、亀戸ぎょうざの取説によれば、最大の特徴は「先焼き」なことです。
つまり、最初に焼き目を付けてからお湯を入れて蒸す、というのが一般的な焼き方と違う亀戸ぎょうざのオリジナリティ。
このために「水蒸気爆発」的な事態まで引き起こしたのですが、マエストロは堂々と「後焼き=先に蒸してから焼き目を付ける」というオーソドックスな焼き方をしています。
素人にとってお取り寄せ商品の取説は絶対存在。「聖典」です。
のっけから禁忌を犯すなんて…

餃子を美味しく焼く最大のポイントは4分以上蒸す

 動画のポイントを整理すると以下のとおり。

(1)Reproをスタートして、まずは120℃に向けて加熱をしつつ米油を投入します。
(2)米油の量はフライパンの直径の半分ぐらいを油が覆うのが目安。今回の20cmのフライパンだと大さじ1(15ml)でした。
(3)油を入れたら、餃子を重ならないように置いていきます。20cmのフライパンでは8個でした。
(4)餃子を置いて、表面温度に達したら第2段階。180℃に表面温度を上げつつ、熱湯50mlを加えてふたをして蒸し焼きにします。120℃から徐々に温度が上がっていくので密閉性が高いSCANPANのふたをしても「水蒸気爆発」のような状態になる心配はありません。

小野寺さんが最も強調していることは、

「4分以上蒸し焼きの状態を維持すること」

つまり水の量は50mlが絶対なのではなく、この「4分間の蒸し焼き状態」を維持するために必要な量である、ということです。
そしてこの「4分間」も絶対ではなく、あくまでも「標準値」です。
皮が厚い餃子なら6分間とか、亀戸ぎょうざのように皮が薄く、事前に蒸されているタイプは3分間でも良い、と言っています。

マエストロの餃子の焼き方レクチャー後半戦の動画

 さて次は後半戦、完成までの動画ですが、実はこの実験2回やっています。後編の動画は2回目の実験の様子です。
1回目は水が完全になくなった時点(=ほぼ4分強)で火を止めて完成。これで素晴らしい仕上がりになっていましたが、2回目は水が完全に無くなってから1分間さらに180℃をキープすると仕上がりはどう変わるのか?を実験してみました。
小野寺さんの説明は、餃子をうまく焼くための重要な示唆に富んでいます。ぜひ後編もごらんください。

火を止めてでもふたをしろ

 後半戦は目からうろこのアドバイスとともに、小野寺さんの所作を仔細に観察していると、細かい工夫が見えてきます。

  • 火力が強すぎた場合には、火を止めてでも4〜5分間の蒸し時間をキープする。
  • たまにフライパンを傾けて残った水分をばらつきがないように均等に。
  • フライパンより1回り小さめな皿を逆さに落とし、余分な油を捨ててから、微妙に手で皿の底を押し回ししながら餃子をフライパンから抜くときれいに取れる。

などなど…

餃子は蒸して焼く料理

しかしなんと言っても小野寺さんの言葉で最も心に刺さるのは、

餃子は蒸して焼く料理。皮とあんを蒸すという工程が重要。

まさに焼き餃子の本質を突いています。「寸鉄人を刺す」というか、すでに禅ワールドです。

【1回目=水分が無くなったら完成】の結果

まずはこの焼き方のおさらいを。

(1)直径20cmのフライパンをReproに置き、表面温度=120℃に加熱スタート
(2)途中で大さじ1(15ml)の米油を入れる(フライパンの半分が油で覆われるぐらい)
(3)油をフライパン全体に広げながら餃子を重ならないように置いていく
(4)Reproの場合だとスキップボタンを押して180℃に目標温度を変更しつつ熱湯50mlをかけ回してフタをする
(5)そのまま4分間蒸し焼き。たまにフライパンを斜めにしたりして、水が偏りなく均等になるように。
(6)水分がほぼ蒸発したら(=水の弾けるパチパチ音がほとんどなくなってきたら)ふたを開けて水分を完全に飛ばす。
(7)パチパチ音が消えたら火を止めて完成

1回目で焼けた餃子がこちらです。いや、「食べたかったのはこういう餃子です」という素晴らしい仕上がり。正直 港区の某支店で販売しているお惣菜の餃子より断然美味しいです。

【2回目=水分が無くなってから180℃で1分間キープ】の結果

 2回目は1回目の(6)までは同じで、その後はふたを開けたまま180℃で1分間キープしたものです。

写真の明かりの具合で分かりづらいのですが、まあ2回とも焼色はほぼ同じ感じ、若干2回目の方が餃子の端まで焦げが入っているかなあ…

1回目と2回目の比較

 見た目にはほとんど変わらない1回目と2回目ですが、食べてみるとやはり2回目の方が、ややクリスピー感が増している感じです。
どちらが好みかは、もう個人的な主観の問題ですね。正直どっちも美味しいです。
ということでReproレシピとして採用したのは1回目の方ですが、焼き終わりを1分延ばすだけですからどうとでもできるはずです。

シンプルだけど複雑なお題


「4〜5分間 蒸し焼き時間をキープする」

たったこれだけのシンプルな基本原則なんですが、生真面目に考えると結構 変数は多いです。

(1)フライパンの直径は?
(2)フライパンの材質は?
(3)ふたの密閉性は?(きっちり閉まるふたなのか?木の板のようなものなのか?)
(4)火加減はどれくらいか?
(5)餃子のタイプと1回に焼く個数は?
(6)加える熱湯の量は?

(4)の火加減は今回のReproでの実験で「180℃を目指せば良い」と分かりましたが、普通のガス火やIHコンロでやろうとすればそれなりに試行錯誤が必要でしょう。
(2)も火加減(正確には温度)に関わってきます。蓄熱性の高い(温まりにくく冷めにくい)鋳鉄製のフライパンなら通常のガス火でも比較的温度は安定するかもしれませんが、アルミの薄いフライパンだとなかなか難しいものが…
(1)と(3)と(5)は、(6)の加えるお湯の量に関係してきます。組み合わせは無数に近くあります。

でも今回のReproでの実験をベースに、小野寺さんの

「水の量は1〜2mmの高さ」
「火力が強すぎて4〜5分の蒸し時間をキープできない時は火を止めても良いからふたをきっちり閉める」

と言うアドバイスを併用すれば、いつも同じフライパンとふた、同じコンロを使う限り、数回のトライアンドエラーでベストに近い仕上がりに近づけるはず…

ということで、これは大多数の「お取り寄せ焼き餃子」に幅広く応用が効くレシピとしてReproレシピでは「基本の焼き餃子」というタイトルを採用しました。Reproユーザーの方はこのレシピをベースにご使用のフライパン・ふた・餃子のタイプと個数に合わせて応用してみてください。

マエストロお勧めのお取り寄せ餃子は?

 最後に小野寺さんにお勧めのお取り寄せ冷凍餃子を伺いました。


北海道・苫小牧の「ぎょうざの宝永」。
こちらは皮の厚い、もちもちタイプの「蒸し時間6分バージョン」の餃子だそうです。amazonや楽天でも販売しているのでお取り寄せしやすそうです。

宮崎県の「餃子の馬渡」。
こちらは畜産王国らしく豚肉と牛肉の合挽を使ってはいますが、割合は野菜が多めだとか。

焼き餃子協会代表理事に勧められと、どんな餃子なのか無性に食べてみたくなります…

2人で16個の亀戸ぎょうざを平らげたにも関わらず「今日はこれから阿佐ヶ谷の猪八戒(ちなみに餃子の名店)で餃子愛好家の会合があるので…」と言い残して、サンタさんは夕暮れの街並みに消えていきました。
師匠、道を極めるとはそういうことなんですね!

P.S.
あれ以来 師匠の言いつけを守って餃子はしょうゆも何もつけずに食べています…

P.S.2
縦長動画で撮っているのは、TikTokやインスタのリール動画にアップしたいと言う野望があったわけじゃなく、狭いキッチンで師匠があまりにデカすぎ、餃子と師匠の顔が一緒に映らなかったからです…

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