人口55人の島は8割が竹林 アク抜き不要の大名筍

大名筍(たけのこ)を知っていますか?

写真のような細いたけのこで、主に鹿児島県三島村の竹島・硫黄島・黒島で採れるものを大名筍(たけのこ)と称しています。
「それってどこ?」と聞かれれば、あの縄文杉で有名な世界自然遺産の島「屋久島」の近く(直線距離で約20キロ)です。

Jugger90, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

この三島村、その名の通り竹島・硫黄島・黒島の3つの島から構成されていますが、写真のたけのこは、これまたその名の通り、島の面積の約8割が竹林という「竹島」から届いたもの。


竹島の面積は約4.2平方キロメートル、つまり皇居よりちょっと大きいぐらい。そして2025年5月1日現在の人口は、わずか55人。強烈な過疎化が進んでいる島です。
ちなみに竹島へのアクセスは鹿児島本港からフェリーで3時間。もちろん空港はありません。

アク抜きする必要がない筍が生える島がある不思議

 この大名筍、たけのこの種類としては、鹿児島県薩摩半島・大隅半島あたりから沖縄県与那国島までに広く分布するリュウキュウチク(琉球竹)なんですが、リュウキュウチクは基本的にアクが強いたけのこ。
それなのに、なぜかこの三島村の3島を始め、いくつかの島だけに、柔らかくてアク抜きする必要のないリュウキュウチクが群生しています。例えば、西表島とか種子島とか。
種子島では、まったく苦くないのに「ニガタケ(苦竹)」と呼ばれています。一説には美味しいから島外の人に知られないように、あえて「苦竹」と呼んだのが由来とか。
大名筍も、その柔らかさとアク抜きする必要がないほどアクが少ない一方で、日持ちがしないため、お殿様でもないと食べられない希少食材という意味で、その名前が付いたとか…

茹で大名筍

 で、竹島は種子島や西表島と違って小さい島だし、その小さい島の8割が竹林で占められているわけですから、大名筍を主要産業として世に知らしめていくしかないわけです。そんな竹島の「島起こし」を応援する意味も込めて「大名筍」をお取り寄せしてみました。

大名筍の箱を開けると、各種パンフレットも同梱されています。このパンフレットの内容に従って、まずは下ごしらえしていきます。

皮を剥く

パンフレットにあるように、確かに皮は交互に重なっていて簡単に剥けます。パンフには簡単に「適度なところまで剥く」とありますが、どこまでが適度なのか?まったく見当がつかないところが微妙です。しょうがないから剥いた皮の柔らかそうな部分をかじりながら、食べられそうな部分に到達するまで剥いてみました。もしかしたら、これでも剥きすぎなのかも…

食べられない部分をカットする

ここもパンフには「食べられない部分をカットする」とあるんですが、どこまでが食べられて、どこまでが食べられないのか、初めての人には分からないんですよ。
しょうがないから、これも包丁を入れて「硬いな」と感じるところまでカットしました。結構先端の方は長くカットしないといけないのかなあ…
まあいいか、あまり神経質に考えないということで。これで水洗いすれば下ごしらえは完成です。

ついでにレシピのパンフレットも同梱されていました。これで見ると「茹で大名筍」が最も基本的なレシピのようです。
まずはこれを作ってみましょう。

水を少なめ、塩を少々

パンフには「水を少なめ…塩を少々」と、これまたあいまいな説明が。

仕方ないので直径16cmのステンレス鍋に、

  • 水   500ml
  • 塩    2.5g
  • 大名筍 2〜3本(上下半分にカット)

つまりは0.5%の食塩水に大名筍を入れました。

5分ほど茹でる

パンフによれば「5分ほど茹でる」と言うことなので、念のため6分間茹でてみました。

急がない場合はそのまま冷めるまで放置

これまたパンフには「急がない場合は冷めるまでそのまま放置してください」とあります。まったく急いでいないので、ふたをして冷めるまで放置しましょう。

それは、まさにベビーコーン

パンフレットによれば、中に水が入っているので縦に半分に切って、マヨネーズかわさび醤油で、と。
パンフには「さっと茹でるだけで、まるでトウモロコシのような甘さ。」とのうたい文句が。
早速食べてみると…
これはまさに「ベビーコーン」の風味ですね。

成熟したトウモロコシの甘さは感じませんが、「ベビーコーンの味に近いたけのこ」って感じです。(ところでベビーコーンとヤングコーンって同じ早採りしたトウモロコシだってご存知でした? 主に葉も付いているのがヤングコーンで、実だけ採ったのがベビーだそうで…)
普通に美味しいです。下ごしらえの際、生をかじった時には、かすかなエグみを感じたのですが、5〜6分茹でるとまったくエグみも感じません。アク抜きしなくて良いという手軽さだけでもかなりのアドバンテージです。「たけのこの水煮パック」を使うのと同じぐらいの手軽さなのに、水煮より遥かに「たけのこ感?」があります。

焼き大名筍

トウモロコシだと思えば、やってみたくなるのは「焼き大名筍」。まずは皮を剥いて、

  • 濃口しょうゆ  大さじ1(15ml)
  • 酒       大さじ1(15ml)
  • みりん     大さじ1(15ml)

の同割りのタレを塗りつつ焼台で焼いていきます。夜店の「焼きトウモロコシ」ならぬ、「焼き大名筍」。
茹でなくても、焼くだけでエグみがなくなり美味しいですね。ただちょっとパサつく感じがするので「蒸し焼き」の方が良いかもしれません。

大名筍の味噌汁

お次は「大名筍の味噌汁」。直煮するとだしの風味が飛びそうだったので、5〜6分の下茹でをした大名筍を味噌汁に入れました。味は「ベビーコーンたけのこの味噌汁」です。美味しいです。

大名筍の土佐煮

たけのこ料理の定番といえば「土佐煮」。これまた美味しいんですが、大名筍って皮を剥く前の見た目より思いのほか食べられる部分が少ないので、煮物を作る時は多めの本数で作ることをお勧めします。
これも下茹でしてから煮物にしましたが、もしかしたら「直煮」でいけるかもしれません。

大名筍の丸焼き

 そして最後は、「丸焼き大名筍」です。


先程の三島村産大名筍公式サイトのレシピ集の冒頭に出てくるのは焼き大名筍。やっぱり大名筍は「皮ごと丸焼き」がお勧めらしいです。
とは言え、バーベキュー状態はなかなか一般の家庭ではハードルが高いので、アルミホイルに包んでオーブンで蒸し焼きにしました。

こんなふうに、外側の皮を1枚剥き、上下をエイヤッと切り落とし、縦に切れ目を入れてアルミホイルに包みます。縦に切れ目を入れたのは、焼いた後で、熱くなっている皮を剥いて、熱くなっているたけのこを取り出すのはちょっと気乗りしなかったから。
200℃のオーブンで30分焼きました。

出来上がりはこんな感じ。アルミホイルを開くと甘いコーン香?が立ち昇り…
アルミホイルの内側に滲み出た汁を試しに舐めてみると、これもとても甘い。やっぱり本当はかなり甘みがあるたけのこなんですね。
食べてみると、確かにこれが一番美味しくて、一番大名筍らしさが出ています。スタッフの一人は、「ヤングコーンのヒゲを焼いた時の匂い」と表現していました。確かに味といい、香りといい、ヤングコーンを葉が付いたままの状態で焼いたのとかなり似た感じがあります。
相変わらずどこまで食べられるのかはあいまいですが、とにかく美味しいことは間違いありません。

鹿児島県はたけのこの宝庫 日本一の竹林面積

 この大名筍のおかげで知ったのですが、鹿児島県は日本一 竹林面積が大きい県だそうです。でも、たけのこ生産量1位は福岡県。鹿児島県はまだまだ収穫されていないたけのこがいっぱいあるのでしょうか…
大名筍以外にも、「こさんだけ」(中国原産でメンマなどの材料にもなるホテイチク)など鹿児島県には美味しくてアクの少ないたけのこがたくさんあります。

お取り寄せしたい方には

最後に、大名筍をお取り寄せできるサイト「GO!MISHIMA」はこちら。


採れたての大名筍をお取り寄せできる期間は5月上旬から1ヶ月間とのこと。ご興味がある方はお早めに。

まさか島に行ってみたい方は

ところで、まさか島に行ってみたい方はいらっしゃいますか?
そういう方は先程の「GO!MISHIMA」サイトのお問い合わせのページをごらんください。FAQが載っているので参考までにその抜粋を。

Q.泊まれる場所はあるの?
各島に民宿や泊まれるキャンピングカー、ゲストハウスなどがあります。
満室の場合も多いので、必ず予約してご来島ください。(竹島には民宿が一軒あります)

Q.日帰りで行ける?
基本的に日帰りはできません。
最低1泊必要となります。

Q.レンタカーは借りれる?
レンタカーはもちろん、タクシーやバスもありません。
大きな島ではないので徒歩でも移動可能ですが、竹島と黒島は坂道が多いので、足腰が鍛えられます。

Q.ご飯食べられるお店はあるの?
基本的にはありません。
サバイバル能力に長けている方は、自給できるかもしれません。

Q.虫多い?
多いです。

…それなりの覚悟がないと行けない場所であることは間違いないようです。

茹で大名筍のReproレシピ

 「島に行くのはムリ」と判断し、お取り寄せするReproユーザーのために「茹で大名筍」をReproレシピ化しておきました。公式アプリでこのレシピを検索してください。


まだまだ日本国内には知られざる美味しい食材の宝庫が眠っています。
これからも貪欲に新たな食材探しに励みたいと思います。

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