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好きな映画は「シェフ」と「タンポポ」

食がテーマの映画で一番好きものを挙げるとすれば、ジョン・ファヴロー監督の「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」と故伊丹十三監督の「タンポポ」です。
どちらも前向きで明るい気持ちになれることと、制作者の食に対する限りない愛と熱量が伝わってくるから。くじけそうな気持ちになる時に観ると明日への元気をもらえます。
伊丹さんの「食べること、作ること」への情熱

伊丹さんと言えば、若い頃から「食べること、作ること」に対する情熱はひとかたならぬものがあることで有名でした。愛用の食器や調理道具など、彼は食を通して生活を豊かにすることの大切さを時代の流れよりずっと早くから知っていたのでしょう。
伊丹監督の「親子丼」
ネットで何かを検索している時に、ふと目に入ったのが伊丹さんの「親子丼」の話。どんな親子丼なのか知りたいと思ったのですが、なかなか確たる情報が見つからない。どうも奥様の宮本信子さんが風邪の時に作ってくれたものらしく、2001年に宮本信子さんがNHKの「きょうの料理」に登場し、作り方を披露したみたいなのですが、NHKプレミアムアーカイブスの再放送でもしてもらえないと、当然ながら観ることはできない。

「伊丹十三の台所」という本も買ってみたのですが、親子丼について触れられているのは、宮本信子さんのインタビューのみで、
「結婚してまもない頃にね、私が風邪をひいて寝込んでいると、親子丼を作ってくれたんですよ。あれはね、本当においしかった。忘れられない味のひとつですね。」
とだけ。
さらに食べてみたくなる気持ちが高まるばかり…
親子丼レシピの手がかかり
ネットで断片的な情報を拾いながら分かった、もしくは推測できたことはこれだけ。
(1)伊丹十三の親子丼は、玉ねぎなど余計なものは入っていない。鶏肉とたまごと三つ葉のみ。
(2)伊丹十三の親子丼は、砂糖を使っていないので、すっきりした味付けだろう。
たったこれだけの情報ですが十分です。故人を想い、自分なりにベストを尽くした「伊丹十三さんオマージュの親子丼」を作ってみたいと思います。
伊丹十三さんオマージュの親子丼の作り方
親子丼の材料・分量

- 鶏もも肉 75g
- たまご 2個
- 三つ葉 1束
- ごはん 1杯分(180g)
鶏もも肉のお勧めは、築地場外(最近は麻布台ヒルズにも分店が入っていますが)の、これまた親子丼が有名な鳥藤さんの「鶏もも肉親子切り」。肉質も親子丼向きで、最初から親子丼に使えるよう、細めのぶつ切りにされており、便利です。
【親子丼の煮汁】
- 基本の合わせだし 大さじ3(45ml)
- みりん 大さじ2(30ml)
- 濃口しょうゆ 大さじ1(15ml)
すっきりした味付けにするため煮汁の割りは、
だし:みりん:濃口しょうゆ = 3:2:1
にしました。
【トッピング】
- もみ海苔 適量
【道 具】
本来は「親子鍋」があれば良いんですが、今回は中尾アルミのキングフロンフライパン18cmを使います。サイズが直径18cmぐらいで、このフライパンのように側面に傾斜があるタイプがごはんの上に滑り込ませる時に便利です。
三つ葉の茎と葉は加熱時間を変えたい

三つ葉の茎は、それなりに火を通したい、だけど葉は火が入りすぎると色も悪くなるしクタッとして香りも減ってしまうので、別々のタイミングで投入したい。
ということで事前に三つ葉の茎と葉を分けておきます。茎は3〜4cmぐらいにカットします。
卵黄と卵白も投入タイミングを変えたい

たまごをボウルに割り入れ、菜箸で卵白のコシを切り、卵黄は写真ぐらいにしかかき混ぜず、卵白と卵黄がほとんど混じり合わない状態にします。こうするとフライパンに投入する時には比重の重い卵白だけを落とし入れることができます。
とは言え、ほんの少しだけ卵黄が混ざってしまうことも。なので完璧を期したい方は卵黄と卵白を別のボウルに取り分けてかき混ぜておきましょう。
冷たいフライパンから加熱開始

冷たいフライパンに、混ぜ合わせた煮汁と鶏もも肉を置いて加熱を開始します。
表面温度103℃で片面3分煮る

Reproの場合、フライパンの表面温度を103℃に設定して、片面3分間煮ます。
「表面温度が103℃ってなに?」って、つまりは鶏もも肉が硬くならないように弱火で火を入れたいってことです。せいぜいこの写真ぐらいの沸騰具合で。これで両面合計6分も煮れば、みりんのアルコール分もほぼ飛ぶはずです。
ひっくり返して103℃で3分煮る

3分間煮たら鶏もも肉を裏返してさらに3分間弱火で優しく火を通します。これでちょうど良いあんばいで鶏肉に火が入っているかと。
卵白と三つ葉の茎を投入

溶いていた卵のうち卵白をかけ回し、さらにみつばの茎を加えて軽く卵白をかき混ぜながら卵白に火が入るまで加熱します。(目安時間は1分ちょっと)
卵黄に30秒だけ火を入れる

卵白にそれなりに火が入っていたら卵黄を回し入れ30秒だけ、そのまま火を入れます。
三つ葉の葉を散らして火を止める

30秒経ったら、三つ葉の葉を表面に散らし火を止めます。
ふたをかけて余熱で蒸らす

フライパンにふたをかけて余熱で蒸らします。目安は2分間ですが、2分待たずとも卵黄がお好みの半熟具合になったら蒸らしを終了してください。こんな時はガラス張りの中が見えるふたが便利ですね。
もみ海苔を散らして完成

前もって用意していたごはんの上に滑り込ませ、もみ海苔を散らせば「伊丹十三さんオマージュの親子丼」の完成です。
普通に美味しいです。「伊丹十三さんオマージュ」という言い訳をしながら、結局は自分好みの親子丼を作っているだけですから当たり前ですが。
以前から親子丼に玉ねぎって要らないなあ、と思っていたのと、お店でいただく親子丼の味付けが甘すぎるなあ、と思っていたので、この機会に「引き算の親子丼」を作らせていただきました。
ちなみにカツ丼には玉ねぎがあった方が良いと思いますが…
このレシピもReproレシピとして公開しましたので、Reproユーザーの方は公式アプリで「伊丹十三さんオマージュの親子丼」を検索して本体に送信してみてください。
伊丹十三さんのスパゲッティ・アル・ブーロも食べてみたい
伊丹十三さんは、当時の日本のレストランで出されるスパゲッティの出来にもかなりお怒りだったようで、エッセイの中で、
日本人は真似の天才であるという。なにが、なにが。本物を知らないからそんな甘ったれたことがいえるのだ。…<中 略>…根本精神をあやまたずに盗め!と、まあ、それくらいの気合を持っていただかぬことには「スパゲッティの正しい調理法」はとうていお教えするわけにはいかない。
と、読者をかなり手厳しくおどかした上で、最も簡単なスパゲッティとして「スパゲッティ・アル・ブーロ」、つまりはバタースパゲッティの作り方を教えています。
このスパゲッティは、スパゲッティの約1/4量(100gのスパゲッティだったら25g)のバターを茹でたスパゲッティに絡めて、大量のパルミジャーノを振りかけているだけのシンプルなスパゲッティ。
「コレステロール値の上昇という背徳感」に背筋も凍る、まさに悪魔に魅入られたごとき美味しさのスパゲッティなのでしょう。
近々に、体調を整えて「スパゲッティ・アル・ブーロ」にも挑戦してみたいと思います。