鰹節の種類といぶし小屋見学

鰹節を大きく分けると

鰹節は、製法・部位・用途によっていくつかの種類に分かれます。見た目は似ていても、香り・旨味・使い方がかなり異なります。
まずは製造工程の違いにより、カビ付けをしていない「荒節(あらぶし)」と、カビ付けをして熟成を重ねた「枯節(かれぶし)」「本枯節(ほんかれぶし)」の大きく2種類に分けられます。燻した香りが強い荒節は煮物や味噌汁、カビ付けされた枯節は上品な出汁に向いています。

  • 荒節
    • カビ付けをしておらず、黒っぽい。
    • 燻製の香りが強く、力強い味わい。
    • 一般的な削り節(花かつお)や、だしパックの原料として主流。
  • 枯節、本枯節
    • 荒節にカビ付けと天日干しを数回(本枯節は3〜4回以上)繰り返しているため、茶色い。
    • 脂肪分が分解され、すっきりとした、まろやかで芳醇なうまみが出る。
    • 出汁やお吸い物などに使われることが多い。 
  • 裸節
    枯節より柔らかく削りやすい。何かの料理に少しかけたいときに使ったり、簡単に済ませたいときはこれで出汁をとることもできる。カビ付けはしていない。

鰹のいぶし小屋に行ってみた!

筆者は数年前、三重県志摩市にある鰹節工房「かつおの天ぱく」のいぶし小屋を訪れたことがあります。太平洋を望む立地に佇むこの工房は、国内外の料理人や食通が足を運ぶ、いわば“鰹節の原点”とも言える場所です。

小屋に一歩足を踏み入れると、まず圧倒されるのは空間に満ちた燻香と、整然と並べられた鰹節の存在感です。視覚と嗅覚の両方から、「時間をかけて作られた食品」であることが直感的に伝わってきます。
ここで作られているのは、いわゆる「本枯れ節」。製造工程は大きく分けて「切る→煮る→燻す→発酵させる」という流れですが、その一つひとつが単なる工程ではなく、風味形成のための精密なプロセスです。

特に特徴的なのが、古式「手火山製法」による燻製工程です。現在では機械による温度管理が主流ですが、ここではあえて人の手によって火加減を調整します。燻煙の温度や湿度は、鰹節中の脂質の酸化や水分の抜け方に直接影響し、最終的な香りの立体感や雑味の有無を左右します。

強すぎる燻煙は表層の乾燥を早めすぎ、内部との水分勾配を生み、結果として割れやすく、風味の浅い節になりがちです。一方で、穏やかな燻しを長期間繰り返すことで、水分はゆっくりと抜け、同時に燻煙由来のフェノール類が内部まで浸透し、あの独特の深い香りが形成されていきます。

さらに本枯れ節の工程では、カビ付けと天日干しを繰り返す発酵プロセスが加わります。このカビ(主にAspergillus属)は、鰹節中の脂質を分解し、酸化による生臭さを抑制すると同時に、旨味の純度を高める役割を担います。結果として、雑味が削ぎ落とされ、グルタミン酸やイノシン酸によるクリアで持続性のある旨味が際立つのです。

こうした半年以上に及ぶ工程を経て完成する鰹節は、単なる「出汁素材」ではなく、発酵と燻製が融合した高度な保存食とも言えます。

見学の後には、一番出汁の試飲と土鍋で炊いたおかかごはんをいただきました。一番出汁は、沸騰直前の湯で短時間抽出することで、イノシン酸を主体とした澄んだ旨味を引き出したもの。雑味がなく、口中でスッと消えながらも余韻だけが長く残るのが特徴です。

この出汁文化は、京都の茶懐石にも通じる「引き算の美学」に基づいています。素材の力を最大限に引き出しながら、過剰な調味を排することで、結果的に最も豊かな味覚体験を生み出すという考え方です。

伊勢志摩の食文化や伊勢神宮との関わりについての話も興味深く、鰹節が単なる食材ではなく、日本の信仰や文化と密接に結びついてきたことを改めて実感しました。
古代〜中世にかけて、鰹は非常に貴重なタンパク源でした。特に保存が難しい時代において、干して硬くした鰹節は“特別な食べ物”だったのです。また堅魚(かつお)は大宝律令で定められた租庸調の「調」のひとつに定められていたため、宮廷の食材として使われていたり、神社への供物(お供え)として使われたり、祭礼や儀式の際に奉納されることも多かった“最高の食材”だったのです。

帰りには数種類の鰹節を購入。それぞれ削り方や用途によって、出汁の立ち上がり方や香りの広がりが異なるため、料理に応じて使い分ける楽しみもあります。

現在でも、いぶし小屋の見学ツアーは人気を博しています。和食や出汁に関心のある方にとっては、単なる観光ではなく「味の構造」を理解する体験として、非常に価値のある場所と言えるでしょう。

Reproで作る「基本の合わせだし」レシピはこちらから↓
https://recipe.repro.jp/recipe/12

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