
今から10年ほど前、仕事のためにほとんど京都に住んでいるような時期が数年間ありました。その後、京都での仕事も終わり、インバウンドの方も含め観光客が増え、ホテルの値段もうなぎのぼりに…
そんなこともあってだいぶご無沙汰でしたが、知人が結婚したということもあり、今年の正月に10年ぶりに京都を訪れました。
目次
観光客がまぶしくて…

京都で仕事をしていた当時は、1日の仕事を終えてヘトヘトになり「晩ごはんでも…」という時は、観光客が来るようなお店は敬遠していました。
出稼ぎの身としては観光客の方ってまぶしいんですよ。そりゃ楽しい時間を過ごしているんだからキラキラしているのは当たり前。それに比べて自分はくたびれ果てて、異郷の地でひとり寂しく…
そこで祇園北側あたりの地元の方しか来ない静かな店でひとりちびちびと…
ん〜「静かな店」は嘘だな。ゴルフ帰りの老舗の若旦那と芸姑さんが陽気にシャンパン開けてたり、よくご相伴にも預かりました。
「京都人はケチだ」というのは風説です。特にきれいどころを連れた旦那衆は気前が良いです。美味しいワイン 本当にごちそうさまでした。
いや皆さん優しかったですよ。いわゆる「京都人的な壁」を感じることもなく。
いけずな京都人の話は、鴨川より西の洛中(御土居の中)での商売モードになった時の限定的なことなのかな?
東山区、特に祇園北側あたりは日ごろ「いけずな京都人?」として暮らしている方たちにとっても「そういうのは抜きにして…」的なフリーダムな場所だった気がします。(船頭町あたりは別の意味でフリーダム感が漂いますが)
そこで今回は、皆さんがご存知のものも、ご存知でないものも、その頃「美味しかったなあ」と感じたものをとりとめもなく紹介させていただこうかと。
※以下の京都の写真は基本的に10年前に撮影したものです。
鯖寿司のあれこれ

京都と言えば鯖寿司。お寿司になっていないしめ鯖は「きずし」と呼ばれ、千本中立売あたりの居酒屋さんとかでも美味しいきずしが食べられるのですが、今回は棒寿司限定です。なぜって時代も変わり、多くの有名な鯖寿司が東京でもお取り寄せできるようになったから。
このコラムをお読みになって、もし食べたくなっても「京都に行かなくちゃ」だけじゃ切ないじゃないですか。
すぐ食べるなら新幹線の売店で買うべし

京都と言えば鯖寿司、鯖寿司と言えば祇園北側の清本町、「切り通し」と呼ばれる200メートルにも満たない短い通りに面した「いづう」さん。鎌倉のように山を削ったわけでもない平地なのに「切り通し」とは… 由来は定かではありませんがかつての花街を南北に突っ切っている道なのでそう呼ばれるようになったとか。

で、この「いづう」さんの鯖姿寿司、祇園の本店で出来たてのものを食べるより、新幹線に乗る直前に京都駅新幹線改札内の地下売店でハーフ(カット済み)を買って家で食べる方が美味しいなあ、と思っていたんですよ。そうしたら、
と、このMBSラジオのページで、8 代目店主の佐々木勝悟(ささき・しょうご)さんが鯖姿寿司は持ち帰った翌日に食べるのがお勧めだとおっしゃっています。
時間が経つと昆布のうまみが染み込み、発酵した味が楽しめるとか。5〜6時間で美味しくなってくるそうなので、それで新幹線の売店で買う方が美味しかったんですね。
そして、そんな「いづう」さんの鯖寿司もいまやお取り寄せができます。

6,156円(税込)+送料1,111円 合計7,267円
なかなかに高級品です。このお取り寄せは「うまいもんドットコム」ですが、「いづう」さんがご自身でやられているお取り寄せもあります。こちらは鯖姿寿司自体は5,940円で安いのですが、それに梱包料216円+送料1,680円が加わるので合計は7,836円と割高になってしまいます。
まあいずれにせよ、お取り寄せが到着する頃には味が馴染んで食べ頃になっているはず。
ちなみに昆布はだし用なので外していただきます。ただ「昆布を外すか?そのまま食べるか?」問題も、どんな昆布を巻いているのか?によって違います。それは後ほど。
一番好きな鯖寿司は出町柳の満寿形屋さん

個人的に一番好きな鯖寿司は、鴨川デルタのほとり、京阪電鉄の終着駅「出町柳」の桝形商店街にある満寿形屋(ますがたや)さんの鯖寿司です。なんでうどんとセットになっているのかって?

それは、そもそも「うどん屋さん」だからです。いやうどん屋なのか?「すし・めんるい」ってなっているし、写真右ののぼりにものれんにも「元祖鯖寿し」って書いてあるけど…
まあ、どっちでもいいや。少なくとも当時は「鯖寿司だけ食べる」ってメニューはなかった気がします。
満寿形屋さんの鯖寿司は、「いづう」さんより「レア感」(珍しいって意味じゃなく酢締めが優しいという意味)があります。こちらは白板昆布で巻いてあるので、昆布は一緒に食べましょう。
本当に庶民的な商店街の定食屋さんという感じなのですが、今年、昼時に前を通ったら入店待ちの行列が… 観光客もたくさん訪れる人気店になってしまったのですね。
残念ながら満寿形屋さんのお取り寄せは、ネットでは見つけられませんでした。
一汐の鯖にこだわる花折の鯖寿司

同じ出町柳にある花折の鯖寿司。一汐、つまり浜塩した鯖にこだわる高級鯖寿司。代表的な製品は吟撰鯖寿し。かなり脂の乗った大ぶりの鯖の破壊力を受け止める、ちょっと甘めの米とのバランスが絶妙です。そしてお取り寄せのお値段も…
吟撰鯖寿し⋯10,530円(税込)+送料1,450円(3〜4人前)
上鯖寿し⋯7.560円(税込)+送料1,450円(3人前)
さすがに吟撰鯖寿しはお値段もさることながら食べきれないかと心配になり、今回は上鯖寿しにしてみました。

ちなみに、この鯖寿司も白板昆布が巻いてあるので、「いづう」さんと違って昆布もそのままいただきます。
出町柳は福井県敦賀や小浜から京都に至る「鯖街道」の終着点。満寿形屋さんといい花折さんといい、美味しい鯖寿司の宝庫です。(きっと今の鯖は敦賀湾ではなく、豊後水道や日本近海全般から取り寄せられているのでしょうが)
見た目も優雅な八坂の雪

祇園南側の花見小路から二筋東 松竹小路に静かに佇む和食店「祇園にしむら」。
ここの名物「八坂の雪」は千枚漬けを乗せた鯖寿司。10月〜3月限定の粋な鯖寿司です。鯖はレア感があり、「いづう」さんのうさぎのように血合いを取り除く仕立てではないのですが、千枚漬けがあるので良いあんばいの仕上がりです。もちろん鯖寿司も美味しいのですが、個人的には、このお店の一番のお勧めは「アワビの肝」です。

良いあんばいに塩味が効いたアワビの肝は、酒のアテに最高。少しばかりピエール瀧さんを彷彿とさせる風貌の大将の気さくな人柄も相まって酒がいくらでも進みます。
この祇園にしむらの鯖寿司もお取り寄せができます。

八坂の雪⋯5,400円(税込)+送料1,056円
今年の冬は八坂神社にも雪が積もったのかなあ…
京都には他にも鯖寿司やきずしの美味しいお店がたくさんあり、キリがないので、このあたりで鯖寿司はいったん終わりにしましょう。

おまん屋さんと上菓子屋さん

ご存知のとおり京都では、普段遣いするまんじゅうや大福・餅などを扱う「おまん屋さん」とお茶席用の芸術品のようなお菓子を扱う「上菓子屋さん(御菓子司)」に大別されます。
おまん屋さんでは、豆餅(豆大福)で有名な出町ふたばさん、上菓子屋さんでは俵屋吉富さんとか紫野にある嘯月さんとか…
もちろん日ごろ庶民がお世話になるのは「おまん屋さん」なので、こちらを。
大黒屋鎌餅本舗の鎌餅

西からの加茂川と東からの高野川が合流して鴨川になる鴨川デルタ。その加茂川沿いから一筋西を通る寺町通を上がって行くと住宅地に佇む大黒屋鎌餅本舗。

1897(明治30)年創業で、当代で3代目。京都府の「老舗」の基準はギリギリクリアしていますが、「応仁の乱より後はみんな新入り」なんていうコテコテの京都人からすると、たかだか130年ぐらいじゃベンチャー企業ですか…(苦笑)

ここの鎌餅が、一番の好物です。本当に柔らかい求肥に包まれた黒糖の風味が漂うこしあん。甘さも上品で、甘党でもない私でも、いくらでもいけそうです。

お店に入ると三代目がせっせと鎌餅製作に勤しんでいます。すでに70歳オーバーだと思いますが、今もお元気にされているのでしょうか。
京都高島屋でも曜日によっては売っているようですが、ご主人の仕事ぶりを見がてら今出川の本店で買い求めるのが確かかと。もちろん残念ながらお取り寄せはできません。
京都市上京区寺町通今出川上ル四丁目阿弥陀寺前町25
電話:075-231-1495
営業時間:8:30~18:30
※9:30~10:30頃は配達のため一時閉店
定休日:水・木曜
地下鉄烏丸線 今出川駅から徒歩15分ぐらい。
明月堂のニッキ餅

祇園甲部、上七軒などと並ぶ京都五花街の一つ宮川町。夕暮れ時には艶やかな姿もまま拝することができるこの通りにあるのが明月堂さん。創業は1950年(昭和25年)、この宮川筋に店を構えたのは1979年(昭和54年)。

そして明月堂の銘菓が、この「ニッキ餅」。なんと先代が、あの「八ツ橋」からヒントを得て餅にシナモンを混ぜ込んだとか。こちらもふんわりどこまでも柔らかい食感で、少しばかり「洋」のテイストも漂うので、コーヒーや紅茶にも合います。
あの松下幸之助さんも好んでいたとのこと。
こちらも残念ながらお取り寄せはできないようです。
京都府京都市東山区新宮川町通松原下ル西御門町447-1
電話:075-551-0456
営業時間:10時〜19時
定休日:火曜
創業1000年 日本最古のあぶり餅

お次は紫野の今宮神社参道にある「あぶり餅 一和」こと一文字和輔の「あぶり餅」。これは美味しいとか美味しくないとかではなく、日本最古のあぶり餅を経験するということです。一和さんが創業した長保2年(西暦1000年)とは平安時代中期。NHKの大河ドラマ「光る君」の紫式部とかその娘が活躍していた時代です。
気の遠くなるようなスケール感です。ちなみに日本最古の会社は大阪の寺社建築会社「金剛組」。新幹線で東京駅近くになると看板も見えますね。この金剛組の創業が西暦578年、飛鳥時代です。聖徳太子が百済から招いた宮大工によって設立されました。

そして、その悠久の歴史をバックグラウンドに持つあぶり餅がこちら。もち米100%の小さくちぎった餅にきな粉をまぶして白味噌仕立てのたれをかけています。
保存料や混ぜもの一切なし。日持ちもしませんから当然ながらお取り寄せもなし!です。

おねえさんたちがゴザの上で餅をこね、きな粉をまぶしていく完全手作業。以前保健所が素手はNGと言ってきたのを、「うちは平安時代からこのやり方でやってるけど1000年間 食中毒を出したことはない」と突っぱねたとか。京都は時間のスケール感が違います。

そしておばちゃん、もとい女将さんが炭であぶると、餅がプーッと膨らんで…
これこそ「焼き餅」の原型です。
今宮神社にお参りして、お茶を一服しながら、紫式部が口にしたかもしれないあぶり餅を味わいましょう。
京都府京都市北区紫野今宮町69
電話:075-492-6852
営業時間:10時〜17時
定休日:水曜日(1日、15日、祝日が水曜日の場合は翌日)
市バス「今宮神社前」下車、徒歩1分
麩嘉の麩まんじゅう

ここまでお菓子を紹介してきて、どれもお取り寄せできないのはやっぱり切ないなあと。
なので京都でもお使いものの定番の一つ、全国的にもご存じの方も多い、というかお好きな方もたくさんいらっしゃる麩嘉の麩まんじゅうを。
そもそも、この「なま物感」たっぷりのお菓子がお取り寄せできることに感動します。つい最近も結婚した京都の知人が「お持たせ」してくれて「やっぱりこれは京都じゃないと食べられないよなあ」と喜んだばかりなのに東京にいても食べられるとは…(たーちゃんゴメン!「なあんだ」と思っているわけではなく、その気遣いがとても嬉しかったよ。ホテルに帰って秒殺で頂いたし…)
麩嘉さんすごいです。麩まんじゅうだけじゃなくて色々なものがお取り寄せできるじゃないですか。なんと「ひろうす(飛龍頭)」まで…

今回注文したのは、冷蔵便の
麩まんじゅう5個入り 1,350円(税込)+送料1,441円 合計2,791円
なのですが、なんと冷凍便で頼むと、冷凍されて届くそう。そのまま冷凍庫にしまって、食べたい分だけ解凍していただくということができるそうです。さらにすごいなあ、麩まんじゅうって冷凍保存できるんだ…
ところで、お菓子パートは、最初に「おまん屋さん」と「上菓子屋さん」の話から始まったので、最後に問題です。
麩嘉さんはおまん屋さん?上菓子屋さん?
「麩まんじゅうなんだからおまん屋だろ」、「明治天皇も召し上がっているんだよ、上菓子屋さんだろう」…
正解はおまん屋さんでも上菓子屋さんでもなく「麩屋さん」です。東京では「生麩」を売っているお店なんか、私は築地に1軒ぐらいしか知りませんが、京都では御所(かつての宮中)でも、料理屋さんでも、普通のおうちでも生麩は結構な必需品です。「麩屋さん」というジャンルが成り立つこと自体が食文化の違いを感じますね。
京都ならではのオンリーワンな小料理屋
最後はいわゆる料理屋さんについて。
京都の素敵な和食店やフレンチ・イタリアン・中華なら、このコラム読者の皆さんの方が詳しいでしょうから、ここにしかない!と言うお店を一つだけ紹介します。
中心地なのになぜか怪しげな船頭町

京都の中心地 四条河原町の交差点から南に下り、高瀬川や木屋町通に沿った一帯に足を踏み入れると、小路が入り組んだ怪しい一角が突然現れます。このあたりが船頭町。
怪しげですが、美味しいお店もたくさんあります。
あの予約が取れないことで有名な「食堂 おがわ」もこの一帯にあります。
そして今回ご紹介したいのが…
鴨川の漁業権を持つ店「喜幸」
このお店、色々不思議です。まず店名「喜幸(きこう)」なのに、なぜか地元の方は「きいこ」と呼びます。そしてすごいのは…

このオイカワの天ぷら、実は目の前の鴨川で取ってきたもの。このお店は鴨川での投網の漁業権を持っていて、女将さんが朝 鴨川に投網を打っています。(以前にその様子を撮影しているテレビ番組も見たことがあります)
京都にいると驚くほど街と自然の距離が近いことを感じます。(叡電の一乗寺や修学院あたりだとマンションの前に鹿とか猿とか平気でいますしね)
そして取れたての川魚は当然ながら文句なく美味しい!

あの小説家であり、世界を旅した著名な美食家・食通の開高 健さんのお墨付きです。
真偽のほどは知らないですが、開高さんが「いい雲古が出る」と太鼓判を押した店は日本に2つか3つしかないとか…
ちなみに女将さんの先代、つまりお父様は、写真も拝見しましたがかなりの男前で、祇園あたりで浮名を流す有名な色男だったとか。これ不必要な情報でしたね…(京都は人間関係が稠密なのであえて情報共有してみました)
京都市下京区西木屋町通四条下る船頭町202
電話:075-351-7856
営業時間:17時〜 22時
定休日:月曜・火曜

いけずな京都人と仲良くなるのが一番

京都には他にも美味しいものが数多くあり、とても紹介し切れません。数年いただけでもそれなりに情報量が増えるのですから、生粋の京都人はとてつもなく美味しいものの情報を隠し持っているはずです。「普段遣いの美味しいもの」を探すならグルメサイトやSNSよりも、いけずな京都人と仲良くなっておすすめのお店を教えてもらうのが一番の近道かと。
いけずやなんて言わはりますけど、ほんまはそないおりまへんえ。みなさん、お優しいお人ばっかりどす。(祇園のお茶屋っぽい言い回し by チャッピー=Chat GPT)








