黒豆を炊くなら晴れた日に。きれいに炊く4つの秘訣

そろそろ、おせち料理の準備をする季節になってきました。おせちと言えば、難関のひとつが「黒豆」。
昭和の時代には、おばあちゃんの専売特許で、嫁いできた息子の嫁が「どれだけきれいに黒豆を炊けるか?」を姑さんがチェックする、なんてことも…
そこで今回はReproレシピ「ふっくら黒豆」を元に、「黒豆をきれいに炊く秘訣」について。

黒豆をきれいに炊く4つの秘訣

(1)新豆を使う

黒豆の収穫時期は11月下旬ごろ。まさにおせち料理の準備を始める12月ごろから、その年に穫れた「新豆」が市場に出回ります。前年に穫れた、いわゆる「ひね」は、やはり乾燥も進んで、皮もなかなか柔らかくならないので、仕上がりと加熱時間を考えると、圧倒的に「新豆」をお勧めします。

(2)徹底的に保温して、温度を安定させる

黒豆は温度変化を嫌います。Reproレシピでは、アク取りシートをかけ、さらにフタをずらしてかけて加熱しています。
「アク取りシート」をかけているのはアクを取りたいわけではなく、シートに切れ目を入れて外部センサーを挿してもピッタリ液面を覆えるためです。これで、さらに「フタずらし」した外部センサーとの隙間をアルミホイルなどで覆えば完璧です。
Reproを使えば、スタートボタンを押せば、あとは何時間でも勝手に加熱して温度をキープしてくれるので、ずっとコンロの前で火を見ている必要はありません。
それでも少しづつ水分は蒸発していくので、数時間に1回ぐらいのペースで水を足してあげる必要があります。
その場合も、必ず加熱温度と同一温度のお湯を足してください。冷たい水を足すのは「厳禁」です。

(3)必ず晴れた日に炊く

高い温度で炊いた方が、黒豆は早く仕上がります。でも決してグツグツさせてはいけません。Reproの場合、きちんと保温しておけば、沸点近くの98℃でもほとんど泡が出ず、グツグツしません。
普通のコンロでは、そこまで高温にするとグツグツしてしまいます。まだ魚市場が築地にあったころは、ストーブの上で黒豆を炊いているおばあちゃんの姿をよく見かけました。
かつてはそれが一番の「正解」だったのかもしれません。
ところで98℃という沸点に近い温度になると、普段はあまり気にしていない「気圧」の変化が仕上がりに影響します。

2019年10月に記録的な台風19号が東京にを通過した時、自宅の気圧は975hPaまで下がりました。そして、それまで98℃で静かに炊けていた黒豆は、沸点の下降で鍋の中が急にグツグツに…
最近は、冬でも「爆弾低気圧」が発生することもしばしば。黒豆は必ず晴れた、気圧の高い日に炊きましょう。

(4)60℃で2時間予熱する

最後にこれが最も重要なポイントです。
2013年に兵庫県立農林水産技術総合センターが発表した論文
黒ダイズにおける吸水特性及び煮豆の破断特性に及ぼす 高温での浸漬処理の影響


この内容がとても勉強になります。
簡単に要約すれば、「黒豆の裂皮率=皮が破ける割合」が増えるのは、黒豆を水に漬けた時に、黒豆の皮が水を吸収して膨張するスピードより、豆の部分が水を吸収して膨張するスピードが早いから。
今までの前の晩から水に漬けるのをやめて、60℃で2時間予熱してから、本ゆですると皮と豆の膨張スピードが同じになり、裂皮率が大きく低下するというのが結論です。
実際、お店のおせち料理クラスだとチェックも厳しく、炊いた黒豆の約2〜3割はNGになってしまうとも聞きますが、この方法を使うとNGな黒豆は数%に留まり、歩留まりはかなり良くなります。
問題はReproを使わないと、60℃2時間をどう正確にキープするか?という点ですが…

Reproレシピ「ふっくら黒豆」

と、4つの大切なポイントをおさえた上で、いよいよレシピの内容へ。ちなみにこのレシピでは「還元鉄」を使って色を出すなどの工程はありません。ありのままの黒豆の色で仕上げる自然派?レシピになっています。そして砂糖はグラニュー糖を使いあっさり仕上げ、コクはしょうゆのみで出しています。

【材 料】

  • 黒豆      250g(1袋)
  • グラニュー糖  250g
  • 水       1.5L
  • 濃口しょうゆ  25ml

【道 具】

有線外部センサー

これは、Reproユーザーの方のみの注意点ですが、黒豆を炊く場合は、有線外部センサーをご使用ください。基本セットの無線外部センサーの連続使用時間はカタログ上6時間(実際にはフル充電状態なら、もっと長時間使用できますが…)となっているので、途中で電池切れを起こす可能性があるためです。

【手順1】下準備

あらかじめ、分量の水とグラニュー糖を混ぜて、

ザルでさっと洗った黒豆を投入します。

ここでアク取りシートの登場です。鍋のサイズぴったりのアク取りシートに、外部センサーが挿せるように、こんな切れ目を入れておきます。

こんな感じにピッタリ液面をふさいだら、フタをずらしてかけてレシピのスタートボタンをタップします。

【手順2】60℃で2時間予熱

まずは、秘訣その(4)の60℃で2時間の予熱を。これで黒豆の皮と豆の膨張スピードを同期させます。

【手順3】98℃で6時間+2時間加熱

このレシピでは、98℃で6時間加熱するステップと同じ98℃で2時間加熱するステップが連続しています。
そもそも黒豆を炊くためには98℃でも最低8時間はかかるでしょう。それをあえて6時間と2時間の2つのステップに分けているのは、8時間後にいったん味見をして、その後はお好みの柔らかさになるまで2時間刻みで「ループ」させることができるようにしているためです。

当然ながら、この最初の8時間の加熱中、数時間に1回ぐらいの割合で水の量をチェックし、かなり減っていたら、水を足してください。秘訣の(2)にあったように、足し水は必ず98℃のお湯を使います。また7時間目ぐらいに濃口しょうゆを加えます。

【手順4】お好みの柔らかさになるまでループ加熱

8時間経ったら、いったん待機ステップが入るので、味見をしてみましょう。黒豆の柔らかさはもちろん、煮汁の濃さも含めてチェックです。
まだ黒豆が硬かったり、煮汁が薄いと感じる場合は、スキップボタンを、OKの場合はストップボタンを押してください。

スキップボタンを押すとこんな表示が。さらに2時間加熱する場合はOKボタンを押してください。あとはお好みの柔らかさになるまで、このループを繰り返します。

ところで、黒豆はどこまで柔らかく炊けるとOKなのでしょう?
某有名和食店で10年以上料理人をやっていたRepro開発チームのあるスタッフは、「煮方」をしている時は、年末のおせちのシーズンになると胃が痛かった、と言っています。
たいてい他の料理は完成してお重に収まっても、黒豆だけが最後まで残ってしまいます。
そして親方に黒豆のチェックをお願いすると、親方は、その豆を壁に向かって思いっきり投げつけます。
そのまま豆が潰れて壁に貼り付けばOK、豆が壁から跳ね返ったら、まだ加熱が足りない、というかなり厳しいチェック。
今どきは、そんな親方もいないでしょうが、それにしても一流和食店でお客さんに販売するおせちの黒豆は、それぐらい柔らかくないとダメというのは事実。
ということで経験的には、

一般家庭でOKレベルの柔らかさ 8時間〜12時間
お店レベルの柔らかさ 12時間〜16時間

ぐらいの感じでしょうか…

【手順5】完成

お好みの柔らかさまで加熱したら、フタをして常温に冷まします。もちろんこの時も冷蔵庫に入れて急冷してはいけません。

常温まで冷めたら、煮沸消毒した密閉ビンで冷蔵保存します。きちんと消毒が出来ていればかなり長期間の保存が可能なはずです。
ちなみに、Repro開発チームのレシピの中には、圧力鍋を使って時短したレシピもあります。


これなら、約3時間に時短できますし、圧力鍋の中なので晴れた日じゃなくても気圧を気にする必要がありません。
でも、個人的には圧力鍋を使って黒豆を炊くと、普通に炊いたものより皮が硬く感じてしまうんですよね。
やっぱり美味しいものを作るには、最低限の手間は必要ってことなんでしょうか…