イチゴの旬はなぜ早まった? おいしい選び方も解説

イチゴといえば冬になるとスーパーの果物売り場に並び、ファミリーレストランやフルーツパーラーではいちごフェアが始まります。しかし、イチゴの旬の時期はもともと冬からではありませんでした。イチゴの旬は早まったのでしょうか?

また、旬のイチゴを見極める方法や出荷される品種の特徴は?本稿では、これらの疑問に答えるとともに、見極め方、より美味しく保つための保存方法まで、深掘りしていきます。イチゴの世界を存分に味わい尽くしましょう。

フルーツだけど学問上は野菜

実は学問的には野菜に分類されることをご存じでしょうか。園芸学では、植物の性質に基づいて分類を行います。木になる実を果物、草になる実を野菜と区別するのです。イチゴは草本性の植物であるため、この分類法に従えば野菜の一種ということになります。

しかし、日常生活においてはその風味や用途から果物として扱われることが一般的です。農林水産省でも、「栽培方法が苗を植えて1年で収穫する点で一般的な野菜と同じ」という理由で野菜として取り扱っているとされていますが、「果実的野菜」と定義づけています。

また、イチゴの表面に見られる小さな粒々が実は種ではなく、それぞれが独立した果実です。

イチゴの旬 最もおいしい時期はいつ?

イチゴの旬は品種改良とハウス栽培の進歩によって大きく変化しました。かつては春が旬とされていましたが、現在では冬から春にかけてがイチゴの旬とされています。この変化により、イチゴは年間を通じて楽しむことが可能になりました。ここでは、イチゴの旬がどのように変わったのか、そしてそれが私たちの食生活にどのような影響を与えているのかを詳しく解説します。

品種改良とハウス栽培が変えたイチゴの収穫時期

イチゴは品種改良によって、冬でも成長するよう遺伝的に改良されました。これにより、従来のイチゴの旬であった春だけでなく、冬にも収穫が可能になり、市場に出回る期間が大幅に拡大しました。

さらに、ハウス栽培技術の進歩により、農家は季節を問わず一定の環境下でイチゴを育てることができるようになりました。特に二重ビニールハウスや大型暖房機を使用することで、冬でも春のような環境を作り出し、イチゴの栽培が可能になったのです。

これらの技術革新はイチゴの収穫量を増やすだけでなく、収穫時期を前倒しすることで、市場価格が高い時期に出荷することが可能になり、農家の収益向上にも寄与しています。たとえば、クリスマスケーキ用のイチゴ需要に応えるために12月から収穫を開始するなど、季節イベントに合わせた生産が行われるようになりました。

また、夏から秋にかけて収穫できる「夏秋イチゴ」も登場しました。これは真夏や真冬以外ならほぼ一年中収穫できる「四季成り性」のイチゴを使っています。通常のイチゴは「一季成り」で、一年に1回収穫できます。夏秋イチゴが登場したことで、収穫時期をさらに拡張し、年間を通じてイチゴを楽しむことが可能になりました。

このように、品種改良とハウス栽培の進歩は、イチゴの収穫時期を大きく変え、私たちの食生活に新たな風を吹き込んでいます。これからも技術の進化によって、イチゴをはじめとする農産物の生産に新たな可能性が広がっていくことでしょう。

イチゴの品種ごとの旬とその特徴

イチゴの品種にはそれぞれ独特の特徴があり、旬の時期も異なります。ここでは例として「ゆうべに」「とちおとめ」「あまおう」の3品種について旬の時期と特徴について詳しく解説します。

とちおとめ(栃木県)

とちおとめは栃木県を代表する品種で、国内で最も生産量が多いイチゴです。果皮の色は濃い赤色で、甘みと酸味のバランスが取れた味わいが特徴です。やや大きめの果実で、円錐形の形状が多く見られます。

11月ごろから5月ごろにかけて出荷され、2月ごろから4月ごろが特に旬ですが、ハウス栽培により年間を通して出荷されることが多い品種です。

ゆうべに(熊本県)

「ゆうべに」は熊本県のオリジナル品種で、見栄えの良さが特徴です。大玉できれいな円錐形をしており、鮮やかな紅色をしています。

香りは強く、味は酸味がやや控えめで、食べたときに口の中に瑞々しく甘い果汁が広がっていきます。

旬の時期は12月ごろからとされています。

あまおう(福岡県)

「あまおう」は福岡県のオリジナルブランドです(厳密には品種名は「福岡S6号」と言います)。甘い王ではなく、「あ」=赤い、「ま」=丸い、「お」=大きい、「う」=うまい、という特徴から名付けられました。

11月ごろから5月ごろにかけて出荷されています。特に3~4月ごろが旬の時期です。

旬のイチゴを見極める方法

イチゴの旬を見極める方法は、単に最高の味を楽しむためだけではありません。旬のイチゴは栄養価が高く、食感や香りも最も豊かです。旬の時期といえど、そのイチゴが本当においしい状態かどうかを判断する必要があります。ここでは、色や形、香り、そして触感を通じて、旬のイチゴを見分けるための具体的なヒントをご紹介します。

見た目と触感でわかる、旬のイチゴの選び方

旬のイチゴを選ぶ際には、色や形、香りといった視覚や嗅覚で確認することが重要です。
完熟したおいしいイチゴは、果実全体が均一に赤く染まっており、品種によっては色が薄めでも完熟状態の場合があります。白イチゴは、熟成度がわかりにくいですが、ツブツブが赤くなるものや、季節によって色が変わることもあるため、これらの色の変化も選び方のポイントとなります。

また、果皮に張りとツヤがあることも新鮮さの証です。果皮がしんなりしていたり、変色しているものは鮮度が落ちている可能性が高いため、避けるべきでしょう。果実の先端に白色や緑色が残っていないことも、完熟のサインです。先端が白っぽい場合は、生理障害で起きた「先白果」と呼ばれるもので、食味が落ちていることが多いです。

へたの状態も重要で、ピンとしていてツブツブがくっきりしているものが良いとされています。イチゴ特有の甘い香りがするものを選ぶことも、おいしいイチゴを見極めるコツの一つです。家庭用に購入する場合は、サイズや形はあまり気にせず、糖度が高く、甘味が強いものを選ぶと良いでしょう。

イチゴ狩りの場合は、へた周辺に注目し、全体が赤く色づいていて、へたが反り返っているものを選ぶと良いです。イチゴの一番甘い部分は先端であるため、ケーキやパフェに使用する際は、縦にカットすると甘味にばらつきが出ません。

これらのポイントを踏まえつつ、見た目だけでなく、触感や香りを確かめながら、自分の好みに合ったイチゴを選ぶ楽しみを味わってください。

旬のイチゴの味を左右する保存方法

イチゴは鮮度が命です。そのため、最も良いのは購入後速やかに食べることですが、すぐに食べられない場合もあります。イチゴを新鮮な状態で保つためには、いくつかのポイントがあります。

まず、イチゴは乾燥と高温を避ける必要があります。保存する際には、パックのままポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に保管するのが基本です。最近の品種は保存性が向上していますが、それでも2~3日以内に食べることをおすすめします。特に柔らかくなったり香りが強くなったイチゴは、早めに食べるようにしましょう。

次に、イチゴはへたを下にして1段で保存することが重要です。2段重ねでパックされている場合、下のイチゴが潰れてしまうことがあります。持ち帰ったら、へたを下にして1段に並べ替え、果実同士が触れないようにすることで、傷みを防ぎます。

水洗いについては、イチゴの果皮は非常に薄く、水に濡れると傷みやすくなります。完熟果の場合は特に皮が柔らかくなっているため、水洗いは食べる直前に行うのがベストです。水洗いしたイチゴを保存する場合、果汁が流れ出ることを避けるために、へたを取らずに洗います。

最後に、長期保存したい場合は冷凍がおすすめです。冷凍することによって細胞が壊れるので、ジャム作りをする際に味が染み込みやすくなるメリットもあります。
水洗い後、水気をしっかり拭き取り、へたを取った後、水分を保持させるために砂糖を全体にまぶしてからラップで包んで冷凍しましょう。
ジャムなど加工する場合は解凍の必要はありませんが、そのまま食べたい場合は半解凍くらいにしておくと、生の食感までは戻りませんが水っぽくなりすぎずに楽しめます。

イチゴの栄養素と健康効果

ここでは、イチゴの栄養価と、それが私たちの健康にどのように役立つのか、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値をもとに詳しく掘り下げていきます。

イチゴに含まれる栄養素

イチゴには、美味しさだけでなく、私たちの健康に貢献する多くの栄養素が含まれています。なかでも特に注目すべきは、100gあたり62mgと豊富に含まれるビタミンCです。ビタミンCは、肌の健康維持や免疫力の向上に役立つとされています。

また、カリウム含有量は170mgで、血圧の調整や心臓の健康に寄与するとされています。さらに、カルシウム17mg、マグネシウム13mg、リン31mgといったミネラルも含まれており、これらは骨の健康を支える要素として知られています。

糖質は6.6gと低めで、自然な甘さを楽しみながらも血糖値の急激な上昇を抑えることができます。