圧力鍋でチキンブイヨン

 最近はReproについて「1℃刻みで温度管理ができるIH」という認識は以前より広まってきているように感じるのですが、その機能を使って圧力鍋の内圧もコントロールできるというのは、まだ余り知られていないようです。


これまでにコラムでも圧力鍋の使い方を説明しています。

このようにレシピとしても公開しています。

ですがまだ認知度が低いようなので、今回は「チキンブイヨン=チキンスープストック」のレシピで「圧力鍋 on Repro」の使い方を紹介させていただきます。

圧力鍋を制御するということ

Reproで圧力鍋を制御することの詳細は、前述のコラムをごらんいただければ良いのですが、改めて簡単に説明します。

圧力鍋の仕組みは簡単に言えば以下のとおり。

中に水分と具材を入れて密閉加熱→
水温が上昇して蒸気が容器内に充満する→
密閉されているので内圧が1気圧以上に上がる→
加熱された水が蒸発できないままに沸点を超えて120℃ぐらいまで上昇する→
普通の調理より早く出来上がるし対流も抑制されるのでものによってはクリアに仕上がる

制御すべきは温度ではなく圧力

指標とすべきは常に圧力ゲージ

安全性の面からしても圧力鍋において、本来制御すべきは「温度」ではなく「圧力」です。
だから圧力鍋では「圧力ゲージ」が調理の際の指標になるわけです。
ただ温度が上がる→内圧が上がる
という関係性はあるので、間接的に「温度によって圧力を制御する」ことはできます。

表面温度で制御する

温度で間接的に圧力を制御すると言っても、圧力鍋は密閉されているので温度センサーを中に入れることはできません。
そこでReproでは、通常の料理だったら水温ターゲットで温度管理するところを、まるでフライパンで炒め物をする時のように表面温度ターゲットで圧力鍋底外側の温度を測定して、それを基準に調理を進めます。

問題は内容量により圧力が異なること

問題は、同じ圧力鍋を使って、同じ温度にしても調理する具材と水の量がたくさん入っているのか、少ないのか、によって内圧は変わってきてしまうということ。
当然内容量が多ければ、同じ温度でも圧力は高くなります。

一度やってみれば自動化できる

「じゃあレシピ化(自動化)できないじゃない?」
と疑問が湧くかと思うのですが、これが結構できるんですね。ただし条件があります。

(1)レシピとして定量化(つまりは内容量を一定にする)する
(2)常に同じ圧力鍋を使う

この前提条件をクリアできるなら自動化(半自動化?)は可能です。
そもそも圧力鍋での調理工程は単純です。

(1)圧力鍋を強火にかけ、ベント(プシューっと過加圧になった蒸気を逃がす)するまで加熱する。
(2)ベントしたら弱火に落として、圧力ゲージが適正な位置に下がるまで減圧して、そのまま所定時間加熱する。

色々な料理に使えますが、基本的には加熱時間が異なるだけで、この構造は変わりません。

圧力鍋の鍋プロファイル

 では圧力鍋を表面温度で加熱する時の「鍋プロファイル」をどうするのか?という問題ですが、Reproの公式アプリにはいくつかの圧力鍋用プロファイルがあります。

内容を見ると、ざっくりとした水量(内容量)ごとの、ReproのLCD画面に表示されるベント温度や加圧時の温度の目安が書いてあるだけです。こうしたプロファイルが何種類かあるのですが、そこに「自分が持っている圧力鍋のプロファイルがない」としても問題ありません。
このプロファイルは所詮「目安」なので、いずれかの圧力鍋のプロファイルを使って、実際にお手持ちの圧力鍋でのベント温度はReproの温度表示で何℃なのか?、ベントしない(湯気が出ない)安定稼働状態にするのは何℃にキープすれば良いのか?をメモしておくだけです。
ご自身が作るレシピ(=圧力鍋に入れる具材・水の量)とお手持ちの圧力鍋の種類により適切な温度はその都度違います。
大事なことは、どのプロファイルを使っても良いけれど、必ず圧力ゲージの挙動を確認して適切な温度に調整するというだけです。

「それじゃあ、普通のガスコンロやIHを使っても同じじゃないか?」

って?
いえいえ、先ほども述べたように、もし同一のレシピ(=同一の内容量)・同一の圧力鍋であれば、2回目からは定式化・自動化が可能になるというところがReproを使って圧力鍋を制御するメリットです。

チキンブイヨンのレシピ

Modernist Cuisine at Home 現代料理のすべて

 前置きが長くなりましたが、それではチキンブイヨンを実際に作っていきましょう。圧力鍋を使ったチキンブイヨンやビーフブイヨンの作り方を世間に広めたのは、創成期のマイクロソフトCTOだった天才ネイサン・ミアボルド率いるモダニストキュイジーヌのレシピからです。
圧力鍋を使う主なメリットは、
(1)高温・高圧なので短時間で抽出できる
(2)高温・高圧なので濃厚なスープストックが抽出できる
(3)ほとんど対流が発生しないのでクリアなスープストックが抽出できる
という3点です。
このモダニストキュイジーヌ流のレシピで料理家の樋口直哉さんがチキンブイヨンを抽出する動画をYouTubeにアップしていました。


樋口さんの作り方は、モダニストキュイジーヌのレシピと構造はまったく同じですが、肉の分量を半分に減らして、水の量を5割増しにしています。
モダニストキュイジーヌのレシピのまま作ると、かなり濃厚なスープストックが抽出されてしまうので、希釈せず「ストレートで使える」、つまり普通の家庭でも使いやすい濃度のブイヨンに加工しているのでしょう。
なので材料・分量は樋口さんバージョンに準拠します。

チキンブイヨンの材料・分量

  • 鶏手羽肉⋯350g
  • 鶏むねひき肉⋯350g
  • 玉ねぎ⋯1/2個
  • ニンジン⋯1/2本
  • セロリ⋯1/2本
  • にんにく⋯3片
  • ローリエ⋯1〜2枚
  • 水⋯1.5L

使用する圧力鍋

WMF パーフェクトプロ4.5L

使用する圧力鍋は、先ほどプロファイルを紹介した「WMF パーフェクトプロ4.5L」です。
すでに生産終了して、現在は後継機種が販売されています。
水1.5Lと合計700gの鶏肉、さらに香味野菜が加わるので総容量は2〜3Lになるはず。
このぐらいの容量の圧力鍋がちょうど良いと思います。

香味野菜をカット


ニンジンやセロリは小口切りに、玉ねぎは粗いみじん切りにします。

にんにくは半分にカット。にんにくの皮をこんなにきれいに剥く必要はありません。単に「もったいない」な気持ちが湧き上がり、後で「だしがら」を再利用しようとの思惑から、より分けしやすいように剥いただけです。

鶏手羽をカットする

手羽は、手羽先と手羽中を関節でカットして、半分にカット(骨を折る)します。樋口さんは肉スキ包丁で、骨を叩き折っていました。
うちにはそんな素敵な包丁はありませんし、出刃包丁で代用するにしても、それなりのサイズの出刃じゃないとしんどいです。
で、うちで使うのはゴツい調理ハサミ。それでも手羽中はなかなか手ごわいです。
手羽中には、尺骨と橈骨という2本の骨が通っています。構造は人間の腕に脛骨と腓骨があるのと同じ。尺骨は太くて橈骨は細い骨です。
私がよくやるのは、この尺骨と橈骨の間に包丁を入れて手羽中を縦2つにカットします。2つの骨の接合部分の軟骨にうまく包丁が入ると簡単に切れます。そして細い橈骨側は手でポキっ、太い尺骨側は… そのままで諦める、というもの。(苦笑)

鶏手羽を霜降りする

鶏手羽のカット処理が終わったら、別の鍋に湯を沸かし鶏手羽を霜降りします。表面が白くなったらOK。冷水に取ります。

圧力鍋に具材・水を投入

圧力鍋に霜降りした鶏手羽、鶏むねひき肉、香味野菜、ローリエを入れ、

水1.5Lを加えて、圧力鍋のふたをします。

ベント温度(想定126℃)に加熱

鍋プロファイルに書かれている温度を目安に、この圧力鍋のベント温度(126℃)に向けて加熱開始します。

何度も言いますが、見るべきは「圧力ゲージ」。一番上まで上がり、プシューと蒸気が吹き出したらベントしている証拠です。
ちなみに今回は、119℃あたりでプシューっと来ました。なのでこの料理(内容量)のベント温度は119℃あたりなのでしょう。

安定温度(想定111℃)に移行

プシューときたらすぐに、安定稼働する温度に移行します。これも鍋プロファイルの目安では想定111℃です。実際には圧力ゲージでリングの下がり具合を見てリングが適正な位置にあるように調節します。
それともう一つは、湯気が出ない温度まで下げること。ただし下げ過ぎると次第に圧力ゲージのリング位置も必要以上に下がってしまうのでご注意を。

実際には、完全に湯気が止まり、かつリング位置が安定する温度は109℃でした。(この写真は108℃になっていますが…)

1時間30分加熱

後はこのまま1時間30分加熱します。もう目を離しても自動的に適正圧力をキープし続けます。

ふたを開ける時は必ず圧力ゲージをチェック


今回作ったReproレシピでは、1時間30分の加熱後に20分間の放熱時間を設定しています。圧力鍋のふたを開ける時は、必ず圧力ゲージが下がり切っていることを確認してください。

20分ぐらい放熱すると、圧力鍋の表面温度はおおよそ80℃ぐらいまで下がってきます。

チキンブイヨン完成

圧力鍋のふたを開けてみるとこんな感じの仕上がりです。

シノワなどで濾す

ざるやシノワなどで濾します。
通常は一回り大きいボウルに氷水を入れて、冷ましながらブイヨンを受けるのですが、このあたりがCRISTELの便利なところです。
和食の「やっとこ鍋」のように2cm刻みのシリーズになっていて、ハンドルが取り外しできるのでスタック可能。こういう時には直接 鍋で受けられるので洗い物が減らせます。

もし「脂や細かい濁りが気になる」という方がいらっしゃったら、この時に「アク取り(だしこし)シート」などをかけて濾すか、冷蔵庫で冷やして表面の脂だけ掬ってください。
繊細なスープを作る時には必要な作業なのかもしれませんが、チキンブイヨンの脂はラーメンで言えば「鶏油」。うまみの素なので、そこは目的に応じて。

濃厚で文句なく美味しいです。0.5〜0.6%ぐらいの塩を入れるとうまみが引き立ち、そのままスープとして出しても十分な感じです。

そこらへんの材料でポトフ的なものを…

そもそもなんの目的もなくチキンブイヨンを取ってしまったので、ブイヨンの材料の残りや冷蔵庫にあった野菜で「ポトフ的?」なものを作ってしまいました。

まとめると

今回のレシピ(分量)で、私の圧力鍋を使った場合のReproレシピは以下のとおりです。

STEP01 120℃・2分
※念のため実際のベント温度=119℃より1〜2℃上に設定
プシューっと蒸気が出たら次のステップへ。

STEP02 109℃・1時間30分

STEP03 20分の放熱時間(待機ステップ)

というように、皆さんも1回トライしてみれば、お持ちの圧力鍋での「マイレシピ」が完成します。トライと言っても失敗することはありませんのでご安心ください。
ただしこのレシピは、この分量が前提で、かつ自分の圧力鍋でのみ通用するレシピ(温度?)なので、新作のReproレシピは、元のベント温度=126℃、安定加熱温度=111℃のままで公開することにします。
Reproユーザーの方はアプリで検索して、「マイレシピ」に温度を修正して使ってみてください。

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